出版社内容情報
試験官の一人であったガウスが興奮したとも伝えられている、1854年に行われたリーマンの教授資格取得講演「幾何学の基礎をなすある仮説について」は、近代および現代幾何学の発展の礎といえる大変著名なものであり、その影響は計り知れない。本書は、この講演に関して解説を行い、また現代数学におけるその甚大なる影響の中から、トピックを選んで論述する。
まず前半部では、初めに19世紀におこった幾何学の革命「ユークリッド空間からの離脱」について、リーマン以前の状況について簡単に説明する。そして、リーマンの教授資格取得講演「幾何学の基礎をなすある仮説について」を、現代の幾何学の標準的カリキュラムにおいて教えられている諸概念と講演との対応、また以後の発展にどのように取り入れられているかという観点から解説を行う。
後半部では、まずガウスに始まり、リーマンにおいて認識された「内在的幾何」を表現する多様体が、「外在的」にユークリッド空間内の部分多様体として実現されるかということをあらわす「埋め込みの問題」を扱う。次に、リーマンの講演においても言及されている離散空間に関連して、現代微分幾何学における中心的概念の一つであるグロモフ・ハウスドルフ距離について解説し、その後リーマン幾何学の現状の研究の概要をまとめる。最後に、リーマンの数論と「リーマン多様体」を結び付けるという流れを鑑み、さらにリーマンに強く影響を与えた数学者の一人であるディリクレの名を冠する算術級数定理の幾何学版について、筆者の最近の研究も含めて紹介する。
目次
第1章 リーマン登場までの幾何学の状況(ユークリッド幾何学と空間論;非ユークリッド幾何学ガウスの曲面論;)
第2章 リーマンの教授資格取得講演と現代幾何学(リーマンの教授資格取得講演1;解説1:微分可能多様体;リーマンの教授資格取得講演2;解説2:リーマン幾何学;リーマンの教授資格取得講演;解説3;リーマン幾何学のその後)
第3章 リーマン多様体の埋め込み(基礎概念:はめ込みと埋め込み;ベクトル束、ファイバー束、主束;位相的埋め込み;等長埋め込み;その他の埋め込み)
第4章 連続と離散:グロモフ・ハウスドルフ距離とリーマン幾何学(大域リーマン幾何学の歴史;グロモフ・ハウスドルフ距離 ほか)
第5章 リーマン多様体の素閉測地線(素数定理と素測地線定理;ディリクレの算術級数定理とその幾何学類似 ほか)
著者等紹介
勝田篤[カツダアツシ]
1958年、愛知県生まれ。2024年10月より慶応義塾大学自然科学研究教育センター訪問教授。理学博士(名古屋大学)、専門はリーマン幾何学およびスペクトル幾何学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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