出版社内容情報
本書は流体工学の知識を有する理工系学生・技術者を主な対象とし,計測データに基づいて計算機援用工学(CAE)シミュレーションの精度を向上させるデータ同化の基礎から実装,そして,応用までをバランス良く学ぶための教科書である。
データ同化理論および数値流体力学に関して簡潔に説明したあとで,データ同化アルゴリズムを数値流体力学コードにおいて実装する際の詳細を説明するようにした。特にアンサンブルカルマンフィルタにおけるアンサンブルの推定結果への影響や4次元変分法におけるアジョイントコードの具体的な構築方法など,通常,専門書や論文には十分に記述されないノウハウ的な内容も可能な限り解説した。本書で使用したデータ同化コードはWebサイトから自由に入手できるので,本書の内容と合わせて利用いただくことでデータ同化に対する理解がさらに深まると考えられる。
機械学習・深層学習の応用分野の広がりによってベイズ推定の有用性が改めて認識されている中で,数値シミュレーションと計測データを使ってベイズ推定を実現するデータ同化は,数値シミュレーションや実験計測に取り組む研究者・技術者にとって問題解決のための新たなアプローチとなりうると期待される。
目次
第1部 基礎編(流体工学とデータ同化;データ同化理論の導入;数値流体力学の導入;流体現象の逐次型データ同化;流体現象の変分型データ同化;データ同化の高速化)
第2部 応用編(計測システムの改善;乱流モデルの高度化;航空気象への応用)
付録 データ同化のプログラム
著者等紹介
大林茂[オオバヤシシゲル]
1987年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。現在、東北大学流体科学研究所教授、東北大学リサーチプロフェッサー、工学博士。専門は航空宇宙流体工学(CFD、進化計算、多目的設計探査)
三坂孝志[ミサカタカシ]
2008年東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士後期課程修了。現在、産業技術総合研究所インダストリアルCPS研究センター主任研究員、博士(情報科学)。専門は計算工学、データ同化
加藤博司[カトウヒロシ]
2013年東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士後期課程修了。現在、統計数理研究所データ同化グループ客員准教授、博士(工学)。2019年宇宙航空研究開発機構退職後、都内マーケティング会社に勤務。専門は航空宇宙流体工学、データ同化
菊地亮太[キクチリョウタ]
2017年東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士後期課程修了。現在、京都大学産官学連携本部特定助教、博士(工学)。専門は航空気象、データ同化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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