出版社内容情報
本書は、タンパク質を「構造」「機能」「運動」「進化」という統一的な視点から理解するための理論的枠組みを提示した生物物理学・計算生物学の名著『Protein Actions: Principles and Modeling』(Ivet Bahar、Robert L. Jernigan、Ken A. Dill著)の翻訳本であり、タンパク質を“生きた分子機械”として捉える知的興奮に満ちた一冊である。本書の最大の魅力は、単なる実験的知識の羅列ではなく、折りたたみや結合、ダイナミクスといった現象を統計力学やエネルギー論、動力学など様々な角度から体系的に説明している点にあり、生物・化学・物理・統計学など幅広い分野の学生・研究者が学びやすい教科書となっている。基礎から応用までの構成も巧みで、安定構造や協同性、折り畳みキネティクス、進化、分子シミュレーション、薬物設計などを段階的に学ぶことができ、構造生物学・分子動力学・創薬分野の学生や研究者にとって極めて有用である。特に「なぜその構造がその機能を生むのか」「どのような運動が生命現象を支えるのか」を定量的に理解したい読者にとって、本書は最良の道標となるだろう。さらに、原著にはなかった「AlphaFold」「クライオ電子顕微鏡」の解説を付録章として追加しており、タンパク質の最新の研究分野についても知ることのできる一冊となっている。
[原著]Protein Actions: Principles and Modeling, Taylor & Francis(Garland Science), 2017
【目次】
第1章タンパク質は特定の構造に折り畳まるポリマーである
1.1 タンパク質は細胞の機能を実現する機械である
1.2 タンパク質には配列構造機能という関係がある
1.3 アミノ酸はタンパク質の繰り返し単位である
1.4 天然状態のタンパク質はコンパクトで明確な3 次元構造をもつ
1.5 タンパク質には階層構造がある
1.6 膜環境内で安定して機能するタンパク質
1.7 線維状の構造をもつタンパク質
1.8 天然状態のタンパク質は構造のアンサンブル
1.9 まとめ
第2章タンパク質は細胞の機能を果たす
2.1 タンパク質は細胞内で多くの活動を担っている
2.2 タンパク質の機能は,その構造とダイナミクスにコードされている
2.3 タンパク質の誕生
2.4 生命のために働くタンパク質
2.5 健康なタンパク質,病気のタンパク質,死ぬタンパク質
2.6 まとめ
第3章タンパク質は安定な平衡配置をとる
3.1 天然状態と変性状態はともにタンパク質の安定状態である
3.2 統計力学はタンパク質の安定性を記述するための言語である
3.3 二状態の熱力学を用いたシンプルなタンパク質変性
3.4 タンパク質は酸性または塩基性の溶液中で変性しやすい
3.5 変性状態は構造の分布をなしている
3.6 まとめ
付録3A タンパク質における解離定数の典型的な値
第4章タンパク質への結合が生物学的な作用につながる
4.1 イントロダクション
4.2 結合は結合多項式によってモデル化できる
4.3 アロステリーでは,結合は構造変化と協同して起こる
4.4 阻害剤と活性化剤は他の結合作用を調整できる
4.5 協同的な結合は調節,シグナル伝達,およびエネルギー変換の鍵である
4.6 ブラウン運動ラチェットは協同の結合イベントによって指向性のある運動を生み出す
4.7 まとめ
付録4A タンパク質における解離定数の典型的な値
第5章タンパク質折り畳み(フォールディング)と凝集は協同的に起こる転移である
5.1 タンパク質は構造や性質において鋭い遷移を示す
5.2 タンパク質やペプチドは協同的なヘリックスコイル転移を示す
5.3 タンパク質の折り畳みにおける協同性は,二次構造および三次構造の相互作用から生じる
5.4 タンパク質は、協同的に作用し合って凝集していき、凝集体、線維、そして結晶を形成していく
5.5 まとめ
付録5A 進んだヘリックスコイルの理論
付録5B アミロイド凝集の理論
第6章タンパク質折り畳みの速度論についての原理
6.1 レヴィンタールのパラドックスによって,タンパク質折り畳みの機構に関する探索が始まった
6.2 折り畳み速度の実験は質量作用モデルによってモデル化できる
目次
第1章 タンパク質は特定の構造に折り畳まるポリマーである
第2章 タンパク質は細胞の機能を果たす
第3章 タンパク質は安定な平衡配置をとる
第4章 タンパク質への結合が生物学的な作用につながる
第5章 タンパク質折り畳み(フォールディング)と凝集は協同的に起こる転移である
第6章 タンパク質折り畳みの速度論についての原理
第7章 タンパク質は進化する
第8章 バイオインフォマティクス:タンパク質配列からの洞察
第9章 タンパク質の幾何学とエネルギー
第10章 分子動力学シミュレーションと構造サンプリング
第11章 アミノ酸配列からタンパク質の構造を予測する
第12章 タンパク質の動きから生物の作用が生まれる
第13章 ドラッグディスカバリー(薬剤発見)のための分子モデリング
付録1章 ニューラルネットワークによるタンパク質構造予測:AlphaFold 2
付録2章 クライオ電子顕微鏡による構造解析
著者等紹介
バハール,イベット[バハール,イベット] [Bahar,Ivet]
計算科学と生命科学の境界領域で活動し、物理科学と工学の基本原理に根ざしたモデルや手法を開発している。生体分子系のダイナミクスを専門とする。執筆当時は、ピッツバーグ大学医学部の計算システム生物学科において、John K.Vries講座教授および特別教授を務めていた。また、ピッツバーグ大学とカーネギーメロン大学の計算生物学博士号ジョイントプログラムを共同で設立した。現在は、ニューヨーク州立ストーニーブルック大学ラウファー物理・定量生物学センター所長、ルイス・アンド・ベアトリス・ラウファー物理・定量生物学寄附講座教授、および同大学の生化学・細胞生物学の教授を務める。欧州分子生物学機構(EMBO)の会員である
ジャーニガン,ロバート[ジャーニガン,ロバート] [Jernigan,Robert L.]
構造生物学、生物物理学、およびバイオインフォマティクスの境界領域で活動し、特にメカニズムの解明を目的としてデータマイニング、モデルや手法の開発を行い、配列データと構造データを統合している。博士課程の研究をPaul J Floryのもとで、博士研究員としての研究をBruno H Zimmのもとで行った。キャリアの大半でNIHの内部研究プログラムに在籍し、現在はアイオワ州立大学の生化学、生物物理学、および分子生物学の教授を務めている
ディル,ケン[ディル,ケン] [Dill,Ken A.]
統計力学、タンパク質の折り畳み、および細胞生物物理学を研究している。博士課程の研究をBruno H Zimmのもとで、博士研究員としての研究をPaul J Floryのもとで行った。Dillはニューヨーク州立ストーニーブルック大学に在籍しており、同大学のラウファー物理・定量生物学センターの元所長である。ルイス・アンド・ベアトリス・ラウファー物理・定量生物学寄附講座教授、および化学・物理学・天文学といった学部の特別教授を務める。米国科学アカデミーおよび米国芸術科学アカデミーの会員である
藤崎弘士[フジサキヒロシ]
2001年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了。現在、日本医科大学医学部数理データサイエンスAI教育センター/物理学教室 教授。博士(理学)。専門:生物物理・化学物理
藤崎百合[フジサキユリ]
1996年 名古屋大学大学院人間情報学研究科修士課程修了。現在、翻訳家
松永康佑[マツナガヤスヒロ]
2007年 神戸大学大学院自然科学研究科修了。現在、埼玉大学大学院理工学研究科准教授、理化学研究所計算科学研究センターユニットリーダー、博士(理学)。専門、計算生物物理(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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