出版社内容情報
●内容
“環境問題”は不確実であり,人は他の野生生物と同様に常に死の危険を背負っている。そこでは“絶対安全”は不可能だ。「リスクの科学」は,潜在的な危険性を合理的に対処する方法を研究する新しい科学である。ただし――危険性が実証される前に対策をとり,避けるべき事態の重大さを比べる価値判断を含むなど――従来の自然科学にない問題をはらんでいる。それは社会の意思決定のための判断材料を提供する。
●目次
1. リスクに備える=予防原則
1.1. 不確実性の時代
1.2. 二つの誤り
1.3. リスクコミュニケーション
1.4. 生態系サービスの価値
1.5. リスクトレードオフと環境正義
2. リスクを飲む=飲料水の健康リスク
2.1. 閾値の有るモデルと閾値の無いモデル
2.2. 水道水による原虫の感染リスク
2.3. 塩素殺菌によるトリハロメタンの発ガンリスク
2.4. 原虫リスクと発ガンリスクを比較する
3. リスクを食らう=魚の水銀含有量
3.1. 魚の水銀含有量
3.2. 『注意事項』からリスクの自主管理を考える
3.3. 高リスク群のリスク評価
4. リスクを冒す=水産資源管理とリスク評価
4.1. 最大持続漁獲量(MSY)理論
4.2. 漁獲可能量(TAC)制度
4.3. 水産資源の順応的リスク管理
4.4. 生物学的許容漁獲量決定規則のリスク管理
4.5. マイワシとマサバの乱獲問題
4.6. サンマの国際管理
5. リスクに染まる=化学物質の生態リスク評価
5.1. 化学物質の環境基準の考え方
5.2. 亜鉛の生態リスク評価
5.3. 大量の化学物質の環境リスクを評価する
5.4. 化学物質の野生生物への生態リスクを評価する
6. リスクを避ける=外来魚とバラスト水
6.1. 外来生物問題
6.2. 海域におけるバラスト水問題
6.3. 外来種侵入対策の費用対効果
6.4. 侵入経路を絶て
6.5. 外来生物の繁殖を妨げよ
7. リスクを払う=マングース防除計画
7.1. 不妊雄による外来種根絶
7.2. 外来種の防除
7.3. 外来種の空間分布の推定
7.4. 確率論的リスクとリスクの段階分け
8. リスクを示す=絶滅危惧植物の判定基準
8.1. IUCNのレッドリスト掲載基準
8.2. 環境省植物レッドリスト
8.3. 絶滅危惧種と生物多様性
9. リスクを嫌う=トドの絶滅リスク
9.1. 生物多様性条約と持続可能な資源利用
9.2. ミナミマグロの絶滅リスク
9.3. トドの絶滅リスク
9.4. 野生生物保護におけるリスク管理の重要性
10. リスクを操る=ダムと生態系管理
10.1. 知床世界遺産登録と「ダム」問題
10.2. ダムのリスク管理とは
10.3. 洪水の生態系サービスへの貢献
10.4. 減ってしまった野生生物の絶滅リスク
10.5. 堰堤建設で重視されるべきこと
11. リスクを凌ぐ=魚の最適漁獲年齢
11.1. 成長乱獲を防ぐ
11.2. 加入乱獲を防ぐ
11.3. リスクは比較できるか?
12. リスクを比べる=風力発電と鳥衝突リスク
12.1. いずれなくなる化石燃料
12.2. 風力発電の開発目標と発電費用
12.3. 風力発電の好適な立地
12.4. 人工建造物による鳥の事故死リスク
12.5. 風力発電の鳥衝突リスク評価
12.6. 鳥衝突の順応的リスク管理モデル
13. リスクを御する=エゾシカの保護管理計画
13.1. ニホンジカの大発生
13.2. 北海道エゾシカ保護管理計画
13.3. 北海道エゾシカ保護管理計画の個体数推定法
14. リスクを容れる=ヒグマの保護管理計画
14.1. クマは絶滅危惧種か?
14.2. 人への避け方から二種類のクマを考える
14.3. ウェンカムイを数える
14.4. 捕獲数から個体数を推量する
14.5. ウェンカムイを管理する
15. リスクに学ぶ=新たな自然観へ
15.1. リスクをめぐる諸問題
15.2. 生態リスク管理の基本手続き
15.3. 国際捕鯨委員会
16. 引用文献
内容説明
リスクとは、人が望ましくないと考えている事象が起こる可能性(危険性)のことである。生態リスクとは、生物界に悪影響を与えるような事象が起こる危険性を指す。本書は、この生態リスクを評価し、管理するための考え方を紹介する教科書である。
目次
リスクに備える―予防原則
リスクを飲む―飲料水の健康リスク
リスクを食らう―魚の水銀含有量
リスクを冒す―水産資源管理とリスク評価
リスクに染まる―化学物質の生態リスク評価
リスクを避ける―外来魚とバラスト水
リスクを払う―マングース防除計画
リスクを示す―絶滅危惧植物の判定基準
リスクを嫌う―トドの絶滅リスク
リスクを操る―ダムと生態系管理
リスクを凌ぐ―魚の最適漁獲年齢
りすくを比べる―風力発電と鳥衝突リスク
リスクを御する―エゾシカの保護管理計画
リスクを容れる―ヒグマの保護管理計画
リスクに学ぶ―新たな自然観へ
著者等紹介
松田裕之[マツダヒロユキ]
1985年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。日本医科大学助手、中央水産研究所主任研究官、九州大学助教授、東京大学助教授などを経て2003年より現職。現在、横浜国立大学環境情報研究院・教授・理学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。