出版社内容情報
編集委員長:山崎眞狩
編集委員:石崎文彬・一島英治・鵜高重三・江崎信芳・勝亦瞭一・北本勝ひこ・日下部 均・熊谷英彦・小松原三郎・清水 昌・杉本愼
一・高橋秀夫・蓼沼 誠・冨田房男・中尾義雄・藤尾達郎・堀之内末治・三輪清志・八木澤守正・吉田敏臣
●推薦のことば
新しい世紀の初めの年に,「発酵ハンドブック」が,200名を越える専門家の協力とほぼ5年の歳月をかけて完成された。真に時宜を
得たものといえる。
アルコール発酵,乳酸発酵など発酵現象は生化学やバイオテクノロジーの基礎となった。かつて我が国の研究者によって見出された
グルタミン酸発酵は,今や多種類のアミノ酸発酵,核酸発酵へと発展し,発酵技術は我が国が世界をリードする代表的な分野のひと
つである。
今日,発酵と名の付いた事柄は,有機酸発酵,ビタミン発酵,抗生物質発酵など多岐にわたっている。本書では,これらの各種発酵
が網羅されており,その数は実に226項目にも及ぶ。
また80項目の発酵醸造食品などの発酵関連事項とともに,関連する代謝マップが記載されている。まさに,発酵に関して必要な事
項がこの1冊で全てわかるようにまとめられている。
このような本は今まで類例がないものであり,発酵王国といえる我が国の研究者の協力により初めてなしえたものといえる。ポストゲ
ノム時代を迎え,さらに新規な有用物質生産が可能となりつつある。本書の内容を眺めていると,発酵のさらなる無限の可能性が強く
感じられる。発酵の専門家のみならず,広く生命科学の研究者,食品,薬品などの企業の研究者,将来このような研究を目指す学生
や大学院生にとって非常に有意義な本である。
日本学士院会員・東京大学名誉教授 田村 學造
●内容
本書は各種の発酵をはじめ広く発酵関連事項を網羅し、最新の知見までも含む便利でコンパクト
なわかりやすいハンドブックとして、(財)バイオインダストリー協会 発酵と代謝研究会幹事会により
企画・編集された。一冊で発酵関連のあらゆる事項がわかるようになっている。
第Ⅰ部:各種発酵、第Ⅱ部:発酵関連事項、第Ⅲ部:発酵関連代謝マップの3部構成からなる。第Ⅰ
部は、古典的な発酵から最新の知見までを含み、知りたい情報がすぐ見つけ出せるよう各種発酵項
目を五十音順に配列し、知りたい事項が短時間でわかるよう個々の発酵について[発酵の概要][構
造式][発酵式][歴史][発酵菌][発酵経路][発酵の実際][最近の進展][応用・工業化実績][用
途]などの内容から構成した。第Ⅱ部では、発酵醸造食品も多く取り上げ、広く発酵関連事項につい
て解説している。第Ⅲ部では、発酵現象の理解を深められるよう、関連の代謝マップをとりあげた。
わが国では古来より発酵分野の根強い伝統があり、「グルタミン酸発酵」に始まる近代的「アミノ酸発
酵」工業、ついで「核酸発酵」工業でまず世界をリードしてきた。近年では抗生物質発酵や組換え蛋
白質発酵とも呼ぶべき新しい発酵も開拓されている。その伝統のうえに、多くのオリジナルの執筆者
を擁する、世界でも類のない発酵の集大成というべき「発酵ハンドブック」が誕生した。
●目次
第Ⅰ部 : 各種発酵
【アルコール発酵】
アルコール発酵(酵母)、アルコール発酵(細菌)、アルコール発酵(アミロ菌)
【有機酸発酵】
α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)発酵、2-ケトグルコン酸発酵、5-ケトグル
コン酸発酵、エリソルビン酸 (D-アラボアスコルビン酸;イソアスコルビン酸;イソビ
タミンC)発酵、アロイソクエン酸発酵、イソクエン酸発酵、イタコン酸発酵、カプロン
酸発酵、クエン酸発酵、グルコン酸発酵、コハク酸発酵、ピルビン酸発酵、フマル酸
発酵、プロピオン酸発酵、メバロン酸発酵、マロラクティック発酵(リンゴ酸‐乳酸発
酵)、リンゴ酸発酵、コウジ酸発酵、混合有機酸発酵、酒石酸発酵、酢酸発酵、乳酸
発酵、シュウ酸発酵、2,5-ジケト-D-グルコン酸発酵、2-ケト-L-グロン酸発酵、ポ
リヒドロキシ酪酸発酵、スピクリスポール酸発酵、ヒアルロン酸発酵、ポリヒドロキシ
アルカン酸発酵、酪酸発酵
【炭水化物発酵】
2,3-ブタンジオール発酵、アセトイン発酵、アセトン・ブタノール発酵、エリスリトール
発酵、マンニトール発酵、グリセロール(グリセリン)発酵、L-ソルボース発酵、D-リ
ボース発酵、3-ケト糖発酵、セルロース発酵、カードラン発酵、キサンタンガム発
酵、プルラン発酵、デキストラン発酵、トレハロース発酵、グリコーゲン発酵
【ビタミン発酵】
リボフラビン発酵、ビオチン発酵、ビタミンB6発酵、ビタミンB12発酵、D-パントテン
酸発酵、ユビキノン発酵、メナキノン発酵
【アミノ酸発酵】
L-グルタミン酸発酵、L-リジン発酵、L-スレオニン発酵、L-トリプトファン発酵、L-
イソロイシン発酵、L-グルタミン発酵、L-アルギニン・L-シトルリン・L-オルニチン発
酵、L-アラニン発酵、D-アラニン発酵、L-ヒスチジン発酵、L-プロリン発酵、ヒドロ
キシプロリン発酵、L-フェニルアラニン発酵およびL-チロシン発酵、グルタチオン発酵(1)(直接発酵)、δ-アミノレブリン酸発酵、ε‐
ポリ‐L‐リジン発酵、ポリグルタミン酸発酵
【核酸発酵】
5'-イノシン酸発酵(1)、5'-キサンチル酸発酵、イノシン発酵、グアノシン発酵、ウリジン発酵、シチジン発酵、オロチン酸発酵、DNA発
酵、cAMP発酵
【2次代謝産物発酵】
ペニシリン発酵、セファロスポリン発酵(含む 7-アミノセファロスポラン酸発酵)、ス
トレプトマイシン発酵、カナマイシン発酵、キタサマイシン(ロイコマイシン)発酵、ジ
ベレリン発酵、アブシジン酸発酵、FK506(タクロリムス)発酵、スパーガリン発酵、メ
バロチン発酵、ビアラホス発酵、エバーメクチン発酵、クロラムフェニコール・コリネシ
ン発酵、ミクロノマイシン発酵、アストロマイシン発酵、バリダマイシン発酵、ミルディ
オマイシン発酵、セデカマイシン発酵、エンラマイシン発酵、ポリオキシン発酵、ブラ
ストサイジンS発酵、ピロールニトリン発酵、ビコザマイシン発酵、チオペプチン発
酵、カスガマイシン発酵、ミルベマイシン発酵、タイロシン発酵、コリスチン発酵、デ
ストマイシン発酵、マイシナミシン発酵、サリノマイシン発酵、スピラマイシン発酵、ジ
ョサマイシン発酵、セファマイシン発酵、トリコマイシン発酵、シッカニン発酵、エン
ビオマイシン発酵、マイトマイシンC発酵、ジノスタチン(ネオカルチノスタチン)発酵、
ブレオマイシン発酵、アクラルビシン発酵、ミゾリビン発酵、ダウノルビシン発酵
【脂質発酵】
ADD発酵、ステロイド発酵、多価不飽和脂肪酸発酵
【植物の酵素反応を発酵とよぶ場合】
紅茶・ウーロン茶の発酵、葉タバコの発酵、コーヒーの発酵
【微生物菌体を酵素源とした物質生産(発酵酵素法)】
L-ドーパ発酵(酵素法)、L-チロシン発酵(酵素法)、L-アスパラギン酸発酵(1)(酵
素法)、L-アスパラギン酸発酵(2)(酵素法)、L-アラニン発酵(酵素法)、L-システ
イン発酵(酵素法)、L-トリプトファン発酵(1)(酵素法)、L-トリプトファン発酵(2)(酵
素法)、L-リジン発酵(酵素法)、D-ヒドロキシフェニルグリシン発酵(酵素法)(含む
D-フェニルグリシン発酵)、アデニンアラビノシド発酵(酵素法)・ジデオキシイノシン
発酵(酵素法)、CDP-コリン発酵(酵素法)、糖ヌクレオチド発酵、ATP発酵(含むA
MP/アデノシン発酵)、FAD発酵、CoA(補酵素A)発酵(酵素法)、アデノシルメチ
オニン発酵(酵素法)、アデノシルホモシステイン発酵(酵素法)、アスコルビン酸-2-リン酸発酵(酵素法)、アクリルアミド発酵(酵素
法)、L-リンゴ酸発酵(酵素法)、ウロカニン酸発酵(酵素法)、光学活性β-ヒドロキシ酸発酵(酵素法)、ニコチンアミドおよびニコチン
酸発酵(酵素法)、パントラクトン発酵(酵素法)、L-セリン発酵(グリシンからの酵素的変換)、5'-イノシン酸発酵(2)(酵素法)、高リン
酸ヌクレオシド発酵(酵素法)、オリゴ糖発酵、グルタチオン発酵(2)(酵素法)、5'-イノシン酸・5'-グアニル酸の生産(酵素分解法)、
5'-グアニル酸発酵(酵素法)
【酵素・タンパク質発酵】
タンパク質の生産、ムコールレンニンの生産、タカアミラーゼの生産、アルカリプロテアーゼの生産、セラチオペプチダーゼの生産、α-
アミラーゼ(Bacillus)の生産、グルコアミラーゼの生産、プルラナーゼの生産、グルコースイソメラーゼの生産、グルコースオキシダーゼの
生産、シクロデキストリン生成酵素の生産、セルラーゼの生産、アルカリセルラーゼの生産、リパーゼの生産、L-アスパラギナーゼの
生産、トランスグルタミナーゼの生産、遺伝子工学酵素の生産、制限酵素の生産、PCR関連酵素の生産、逆転写酵素の生産、百日咳
毒素の生産、蛋白質性メタロプロテアーゼインヒビターの生産、トレハロース生成酵素の生産、モルシンの生産
【組換えタンパク質発酵】
インターフェロン-αの生産、ヒト成長ホルモンの生産、B型肝炎ウイルス表面抗原の生産、ヒトインスリンの生産、キモシンの生産、
インターロイキン‐6(IL-6)の生産、インターロイキン‐2(IL-2)の生産、ヒト上皮増殖因子の生産、ヒト血清アルブミンの生産、IGF-
Ⅰの生産、HTLV-I gag-env 融合抗原の生産、リパーゼの生産、ヒトカルシトニンの生産、ヒト利尿ペプチドの生産
【その他の発酵】
メタン発酵、PQQ発酵、アスタキサンチンの生産、界面活性剤発酵(ソフォロリピッドなど)、ケトアルカン発酵(n‐アルカン‐2-オン発
酵)、サーファクチン発酵、β-カロチンの生産、藍だて発酵、炭化水素発酵、石油発酵(1)、石油発酵(2)、メタノール発酵、固体発酵、
連続発酵、転換発酵、酸化発酵、代謝制御発酵、並行複式発酵、腸内発酵(大腸発酵)、ルーメン発酵、サイレージ発酵、アルカリ発
酵、溶媒重層発酵、堆肥の発酵、ココアの発酵、上面発酵と下面発酵
第Ⅱ部:発酵関連事項
【発酵現象】
発酵の定義、発酵の歴史、発酵と呼吸、発酵と腐敗、発酵と醸造、発酵形式、発酵式、発酵熱、発酵度、発酵能、発酵とパスツール効
果/発酵とクラブトリー効果、発酵栓/発酵管、発酵微生物
【発酵工業】
発酵操作、開放発酵と密閉発酵、発酵制御、発酵モデリング、発酵法、発酵副産物と再利用技術
【発酵原料】
糖質原料、炭化水素、メタノール、バイオマス
【発酵工学】
発酵槽、発酵装置、発酵用振盪フラスコ、発酵生産のスケールアップ、発酵生産物の分離と精製、排水処理
【発酵醸造食品】
チーズ、発酵バターとサワークリーム、発酵乳(乳酸発酵関係)、発酵乳(ケフィール、クミスなど、乳酒)、ヨーグルト、パン、発酵助成
剤、発酵ソーセージ、発酵豆乳、清酒、合成清酒、みりん、ビール、発泡酒、ブドウ酒(ワイン)、発泡ブドウ酒、シェリー、リンゴ酒(シー
ドル)、ポート、紹興酒、紅曲黄酒、その他の醸造酒(含む粉末酒、中国酒)、ウイスキー、ブランデー、カルバドス、泡盛、本格焼酎、ジ
ン、ラム、テキーラ、白酒、醤油、溜醤油、味噌、食酢、福山黒酢、乳腐、豆腐よう、魚醤油、馴れ鮓、その他の魚類発酵食品、納豆、
鰹節、漬物(日本)、漬物(西洋)、キムチ、テンペ、オンチョム、豆鼓、豆醤、寺納豆(大徳寺納豆・浜納豆)
第Ⅲ部:代謝マップ
解糖系(Embden-Meyerhof-Parnas経路)
ペントースリン酸回路
Entner-Doudoroff経路
TCAおよびグリオキシル酸回路
ヘテロ乳酸発酵経路
アセトン‐ブタノール発酵,イソプロパノール‐ブタノール発酵,酪酸発酵
混合有機酸発酵
ブタンジオール発酵
プロピオン酸発酵
アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン生合成系
アラニン、ロイシン、バリン生合成系
システイン、グリシン、セリン生合成系
リジン生合成系(ジアミノピメリン酸経路)
リジン生合成系(アミノアジピン酸経路)
アスパラギン、アスパラギン酸、イソロイシン、メチオニン、スレオニン生合成系
芳香族アミノ酸(チロシン,フェニルアラニン,トリプトファン)生合成系
ヒスチジン生合成系
プリンヌクレオチド生合成系
ピリミジンヌクレオチド生合成系
脂肪酸・不飽和脂肪酸生合成系
メバロン酸・非メバロン酸経路
C1化合物代謝系
内容説明
本書は、各種の発酵を網羅するだけでなく、発酵関連事項、たとえば発酵現象や発酵工業のこと、さらに発酵醸造食品についても包含し、一冊で発酵のすべてが容易にわかる便利な本である。
目次
第1部 各種発酵(アルコール発酵;有機酸発酵;炭水化物発酵;ビタミン発酵)
第2部 発酵関連事項(発酵現象;発酵工業;発酵原料;発酵工学;発酵醸造食品)
第3部 代謝マップ(解糖系(Embden‐Meyerhof‐Parnas経路)
ペントースリン酸回路
Entner‐Doudoroff経路 ほか)
著者等紹介
栃倉辰六郎[トチクラタツロクロウ]
神戸女子大学家政学部・京都大学名誉教授
山田秀明[ヤマダヒデアキ]
京都大学名誉教授・富山県立大学名誉教授・財団法人バイオインダストリー協会会長
別府輝彦[ベップテルヒコ]
日本大学生物資源科学部・東京大学名誉教授・財団法人バイオインダストリー協会副会長
左右田健次[ソウダケンジ]
関西大学工学部・京都大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。