出版社内容情報
海洋生物由来の天然有機化合物の研究が活発に行われている。海洋生物は、塩濃度の高い海水中に棲んでおり、深海などの一部の場所は陸上にはない高温、高圧などの過酷な環境にある。また、陸上生物と異なり、海洋生物には動けない、あるいは著しく動きが遅いものが存在する。これらの生物が、食餌を確保し、敵から身を守り、パートナーを見つけて繁殖するためには、陸上生物とは異なった方法が必要になるはずである。化学という観点での解答としては、海洋生物独自の海洋天然物の存在が重要であると考えられる。
本書では、海洋天然物の中から、化学構造、生物活性、食品化学、天然毒などの観点から特徴ある化合物を紹介する。天然に存在する有機化合物の構造と生物活性の一端に触れ、興味を持ち、生命現象を解明しようとする学問領域にかかわってみようと思われることを願っている。
目次
第1章 サケやエビの色素 アスタキサンチン
第2章 海洋天然物の草分け カイニン酸
第3章 異常ペプチド化合物 デプシペプチド
第4章 サンゴの天敵にかかわる天然物
第5章 梯子状ポリエーテル骨格を持つ海洋毒
第6章 海から薬 ハリコンドリンB
第7章 タンパク質リン酸化酵素を活性化する海洋天然物
第8章 テトロドトキシンとフグ毒の謎
第9章 シアノバクテリアが生産する生物活性物質
第10章 ホヤの生産する抗がん剤
第11章 タンパク質毒素クラゲ毒
第12章 アメフラシから得られた抗腫瘍性物質
著者等紹介
木越英夫[キゴシヒデオ]
1984年名古屋大学大学院理学研究科博士課程後期課程中退。現在、筑波大学数理物質系教授、理学博士。専門:天然物化学、ケミカルバイオロジー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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