出版社内容情報
本書は,ナノカーボンの中心的物質であるフラーレンについて基礎化学の観点からまとめたものである。
炭素だけからなる単体物質としては,古くからダイヤモンドとグラファイトが知られているが,1985年にセレンディピティにより発見されたかご状の炭素同素体であるフラーレンC60は,
第三の同素体として注目され,ノーベル化学賞の受賞対象となるなど,20世紀最大の発見の一つに数えられている。
最近の研究では,星間物質にC60の存在が確認されたり,C60から超伝導物質や,太陽電池の材料,生理活性を示す物質が得られたりしている。
このようにフラーレンは化学だけでなく,物理学,生物学,医学など,科学のいろいろな分野とのかかわりがある。
本書では,C60に代表されるフラーレンの「合成・構造と性質」,「化学反応性と分子変換法」,「機能と応用」についてわかりやすく解説する。
本文では各所に引用文献を引いており,興味のある読者が原著論文をたどれるようになっている。
第1章 フラーレンとは
1.1 フラーレンとは何か
1.2 炭素の同素体
1.3 炭素化学の時代
1.4 フラーレン発見の歴史
1.4.1 セレンディピティによるフラーレンの発見
1.4.2 フラーレン大量合成法の開発
1.4.3 フラーレンの発見にまつわるエピソード
参考文献
第2章 様々なフラーレンの合成・構造と性質
2.1 フラーレン
2.1.1 フラーレンの合成法
2.1.2 フラーレンの抽出・単離
2.1.3 フラーレンの溶解性
2.1.4 フラーレンの構造
2.1.5 化学修飾によるnon-IPRフラーレンの安定化
2.1.6 フラーレンの鏡像異性
2.1.7 フラーレンの芳香族性
2.1.8 フラーレンの酸化還元特性
2.1.9 フラーレンの吸収スペクトル
2.1.10 フラーレンの光物性
2.2 希ガス内包フラーレン
2.3 15族原子内包フラーレン
2.4 金属内包フラーレン
2.4.1 金属内包フラーレンの構造
2.4.2 金属原子内包フラーレン
2.4.3 金属クラスター内包フラーレン
2.4.4 金属原子の内包によるnon-IPRフラーレンの安定化
2.4.5 溶媒抽出過程で化学修飾される金属内包フラーレン
2.4.6 金属内包フラーレンの酸化還元特性
2.5 リチウムイオン内包フラーレン
2.6 有機化学的手法により合成される原子および分子内包フラーレン
2.7 ヘテロフラーレン
2.8 金属内包へテロフラーレン
参考文献
第3章 フラーレンの化学反応性と分子変換法
3.1 フラーレンの化学反応性
3.2 C60 の付加様式
3.3 化学修飾による電気化学特性の制御
3.4 C60 の分子変換
3.4.1 求核付加反応
3.4.2 環化付加反応
3.4.3 還元反応
3.4.4 酸化反応
3.4.5 遷移金属触媒を用いた反応
3.4.6 ラジカル反応
3.4.7 光反応
3.5 C60 の二付加体の化学
3.6 C70 の構造と付加位置選択性
3.7 金属内包フラーレンの化学反応
3.7.1 La@C2v-C82 の化学修飾
3.7.2 La2@Ih-C80 の内包金属の回転制御
参考文献
第4章 フラーレンの機能と応用
4.1 固体化学と機能
4.2 ホスト・ゲスト化学
4.3 ピーポッド
4.4 ソフトマテリアル
4.5 発光材料
4.6 光電変換材料
4.6.1 人工光合成系モデル
4.6.2 有機薄膜太陽電池
4.7 単分子スイッチング
4.8 生物科学分野への応用
4.8.1 生物活性
4.8.2 造影剤
4.8.3 中性子捕捉剤
第5章 付録
5.1 炭素ケージの異性体番号のつけ方
5.2 フラーレンの鏡像異性の表記法
参考文献
課題と展望
コラム目次
1.恒星の終末とフラーレンの誕生
2.フラーレン全合成への挑戦
3.フラーレンの分子手術
4.N@C60 科学の最前線
5.金属内包フラーレンの構造決定―単結晶X線構造解析
6.金属内包フラーレンの構造:理論計算と実験
7.不斉触媒によるキラルなフラーレン誘導体の合成
8.金属錯体とフラーレンの相互作用に関する研究展開
9.フラーレン導電体・超伝導体の最近の状況
10.サッカーボールと超分子化学
11.太陽電池への応用最前線
12.生理活性フラーレン(C60)研究の最前線
13.光線力学療法への展開
日本化学会[ニホンカガッカイ]
赤阪 健[アカサカ タケシ]
山田 道夫[ヤマダ ミチオ]
前田 優[マエダ ユタカ]
永瀬 茂[ナガセ シゲル]
目次
第1章 フラーレンとは(フラーレンとは何か;炭素の同素体 ほか)
第2章 様々なフラーレンの合成・構造と性質(フラーレン;希ガス内包フラーレン ほか)
第3章 フラーレンの化学反応性と分子変換法(フラーレンの化学反応性;C60の付加様式 ほか)
第4章 フラーレンの機能と応用(固体化学と機能;ホスト・ゲスト化学 ほか)
第5章 付録(炭素ケージの異性体番号のつけ方;フラーレンの鏡像異性の表記法)
著者等紹介
赤阪健[アカサカタケシ]
最終学歴:1974年、東京教育大学大学院理学研究科博士課程化学専攻中退。現在:筑波大学名誉教授、(公財)国際科学振興財団主席研究員、理学博士。専門:有機化学・ナノカーボン化学
山田道夫[ヤマダミチオ]
最終学歴:2008年、筑波大学大学院数理物質科学研究科化学専攻修了。現在:東京学芸大学教育学部自然科学系准教授、博士(理学)。専門:構造有機化学
前田優[マエダユタカ]
最終学歴:2001年、新潟大学大学院自然科学研究科エネルギー基礎科学専攻修了。現在:東京学芸大学教育学部自然科学系准教授、博士(理学)。専門:有機化学
永瀬茂[ナガセシゲル]
最終学歴:1975年、大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程化学専攻修了。現在:分子科学研究所名誉教授、京都大学福井謙一記念研究センターリサーチフェロー、工学博士。専門:理論化学・計算化学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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