出版社内容情報
●内容
これまでに生分解性ポリマーとして開発されてきた高分子材料は、歴史的に3つの性格を有することとなった。最初は生体内で吸収される医用材料の開発に始まり、その後、廃棄プラスチックによる環境汚染を低減することを目的とした生分解性プラスチックの開発へと移行し、今では、カーボンニュートラルを目指した石油資源に依存しない新しい「バイオベースポリマー」としての開発に替わろうとしている。バイオベースポリマーは、「今世紀の中核技術となるバイオテクノロジーを用いて再生可能資源であるバイオマスを原料として合成される高分子材料」と定義しているが、この素材は、カーボンニュートラルを目指した環境対応策だけでなく、原油価格の高騰に伴う原材料費の節減策ともなるとして、今特に注目されているのである。バイオベースポリマーの場合、必ずしも生分解性を備えている必要はないが、天然の素材からバイオ変換されて生まれてくる素材にはその性質が必然的に備わってくる。本書では、これまでに開発されてきた生分解性ポリマーの構造・物性の制御について考えるとともに、新しく開発されているバイオベースポリマーついて例をあげながらその材料設計のコンセプトを述べている。
その内容は、(1)未利用のバイオマス資源の活用の可能性、(2) バイオマスリファイナリーによる新基礎化学原料の開拓、(3)新しいバイオベースプラスチックの開発、複合材料への応用等に関連しており、具体的な天然由来素材として、ポリ乳酸、ポリコハク酸ブチレン、ポリヒドロキシ酪酸だけでなく、天然ペプチド、多糖などについても概略をカバーしている。さらに、チュウリパリンなど今世紀の新プラスチック原料の創生についても具体的に紹介している。
生分解性ポリマーの構造・物性の制御を考えるとともに、新しく開発されているバイオベースポリマーの材料設計のコンセプトを詳述。
目次
第1章 再生可能資源とバイオマス
第2章 ポリ乳酸
第3章 ポリヒドロキシアルカノエート
第4章 ポリコハク酸アルキレンおよび関連2成分型ポリエステル
第5章 多糖類
第6章 ポリアミノ酸とペプチド
第7章 有望な植物性プラスチック素材
第8章 天然素材ポリマーの応用
第9章 ポリ乳酸の成形加工と用途展開
著者等紹介
木村良晴[キムラヨシハル]
1976年京都大学大学院工学研究科合成化学専攻満期退学。1976年工学博士(京都大学)。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科生体分子工学部門教授。同大学バイオベースマテリアル研究センター長、同大学繊維科学センター長。(財)京都高度技術研究所副所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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