出版社内容情報
国木田独歩は、芥川龍之介から「鋭い頭脳」と「柔らかい心臓」を持っていたと評されました。事実重視の平板な描写を特徴とする「自然主義作家」をイメージされるのは、独歩にとって必ずしも本意ではないでしょう。「武蔵野」の郊外称揚には、不衛生で過密化していく近代都市東京を「鋭い頭脳」で嗅ぎ取り、「忘れえぬ人々」には、近代化していく社会の中の滋味豊かな「小民」を「柔らかい心臓」で感受した、作家の無意識のアンテナがあったであろうことは、「忘れえぬ」ことではないでしょうか。近代を生きていく者としての思想や恋愛、生活などが創作のモチーフであることはもちろんですが、背後に凝集したものがあることは、軽視できません。名短編の切れ味をお試しください。
目次
「独歩吟(抄)」「源叔父」「武蔵野」「忘れえぬ人々」「河霧」「欺かざるの記(抄)」「非凡なる凡人」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さんぬあ
1
学校の図書室で借りた。難しい言葉の意味や出てくる土地の解説などがすぐ下に書いてあり、非常に読みやすい。源叔父はとても感動した。また、忘れえぬ人々は音読するといっそう輝く。日本語の使い方がやはり上手い。どの話も哀しく懐かしく温かく素敵だった。国木田独歩さんの本を読みたいけど難しいと感じる人におすすめできる。2018/12/12
MJ
0
「なぜかような場所が我らの感を惹くだろうか。/かような町外れの光景はなんとなく人をして社会というものの縮図でも見るような思いをなさしむるからであろう。/田舎の人にも都会の人にも感興を起こさしむるやうな物語、小さな物語、しかも哀れの深い物語、あるいは抱腹するような物語が二つ三つそこらの軒先に隠れていそうに思われるからであろう。/大都会の生活の名残と田舎の余波とがここで落ち合って、緩やかにうずを巻いているようにも思われる」 冷静かつ素朴な視線と情熱的で繊細な心で描いた詩的な散文に惹きつけられた。2023/12/27
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