内容説明
人種、英語・アラビア数字の連なりと横書き、活字と活版印刷、蒸気機関と鉄道、時刻表、学校、時制、電信…。開化期、未知の西洋は具体的な「物」として出現した。その驚きと困惑の中で人々の認識や知覚はどのように変容し新たな「日本」を生成していったか。
目次
第1章 水のスケッチ
第2章 均される言葉
第3章 三四郎の乗った汽車
第4章 「学校」の「時間」
第5章 さまざまな上陸
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
17
明治時代の時代のうねりを、当時の小説にスポットを当てて分析した散文。 汽車をはじめとする外来のモノが、鎖国明けの日本にとって革命的だったことが伺えます。 世界の歴史・文学と照らし合わせて読むとより一層面白そうだと思いました。2018/01/09
いかすみ
1
大文字の歴史ではなく、ミクロなレヴェルで日本が近代化を果たした変遷を辿る書物。幕末から明治初期に、西洋文明が日本人の認識にどう影響したかを、汽車を中心に筆者は描く。汽車に乗った三四郎は女性の肌を地方ごとに分類し始めるのだが、これは日本という準拠枠が汽車を通して完成しつつあったのだ。汽車は普遍的に乗客に分類への欲望を植え付けるのである。また、鉄道は時刻表を通して、近代的な時間意識をもたらす。近代化に伴い、江戸時代との間に断絶ができあがる。なお、文明開花の三種の神器は蒸気船、蒸気車、電信機だそうな。2024/07/28
take0
1
開化によって明治日本に展開した物事――言語(文字)、鉄道、時間についての論考。2018/09/22
たらら
1
は社のひ氏より推薦の書。いや驚いた。幕末から明治のウェスタンインパクトをこれほど的確にかつ簡潔にまとめた書はあまりないかと思う。外国語が「日本語」という概念をもたらし、鉄道網が「地方」という概念を生んだとの指摘は目が洗われる思いがする。2010/02/16
星村
0
夏目漱石の研究書ではないので、三四郎に関する部分は少なかったです。しかし、汽車により日本人に時間の概念がはっきりと生まれたこと、また汽車が東京と地方の二項対立を生んだなどの見解が面白かったです。明治の時代背景を知ることもできました。江戸時代に模型の汽車に乗ってはしゃぐお侍さんの話がかわいかったです。2011/06/26