感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
26
家康にしたがい数々の修羅場をくぐり抜けてきた歴戦のつわものたる大久保彦左衛門が天下平定後の一族の冷遇に対する不満を書いたものである。わが一族は徳川家とともに苦しい時代を過ごしてきたはずなのだが、天下泰平となってみれば譜代でない取り巻き連中が重用されているという人事の不満である。現代の会社経営などでもある話であり、人間の感情というのは今も昔も変わらぬものだと思う。それでも大久保彦左衛門は子孫に対して徳川家へは忠誠をもって奉公せよと説く。主君を裏切れば無間地獄へと落ちるのだという単純な理屈ながらすがすがしい。2016/02/14
とし
5
下巻。三方ヶ原合戦から長篠の合戦、本能寺の変を経て小牧・長久手合戦、関ヶ原、大阪の陣、と、戦国史の重要な合戦を、彦左衛門自身の体験、風聞を基に記し、彦左衛門の人生観、武功観、子孫への教戒などをつづっている。内容は多分に老人の愚痴と皮肉だが、大久保一族がいかに主家に尽くしてきたか、その大久保一族が現在いかに冷遇されているかを訴える、魂の叫びでもあったろう。門外不出、他人の閲覧を禁ず、と繰り返し書きながら、後世、この書が多くの人の目に触れるであろうことと、言葉が不滅であることを、彦左衛門は知っていたのだろう。2015/09/15
-
- 洋書
- Jerusalem