出版社内容情報
なぜこれまで問われてこなかったのか?!
痛みとは何か?
魚がそれを感じるとはどういうことか?
そしてわれわれは、魚とどのようにつきあえばよいのか?
魚類学者である著者は、痛みの認知構造などを明らかにしたうえで、魚の「意識」というやっかいな領域にも足を踏み入れ、数々の調査と自らの実験結果などから「魚は痛みを感じている」と結論します。
本書の後半では、その結論を受けて、動物福祉の観点から、釣りや漁業、鑑賞魚などにおける人間の魚への対し方が考察されます。
本書は、決して「魚を保護しなければならない」、「魚を食べてはいけない」、「スポーツフィッシングなどやめるべきだ」と声高に主張する本ではありません。
科学的根拠に基づいたニュートラルな視点から、すっきりと論理立て、わかりやすく解説する著者の主張は、「魚の福祉」という難題を読者に提示します。
【目次】
■第1章 問題提起
パンドラの箱を開ける/動物実験/コウモリであるとはどのようなことか/魚に特異な感覚/魚の脳と生理過程/魚の受難/釣り、漁業、養殖の問題/五つの自由/「魚の福祉」は可能か?
■第2章 痛みとは何か? なぜ痛むのか?
痛みの起源/痛みをどうとらえるか?/選択実験/ヒトはいかに痛みを感じるか?/侵害受容/損傷への対応/痛みと意識
■第3章 ハチの針と酢――魚が痛みを知覚する証拠
魚の痛みの調査研究計画/魚の神経/神経と侵害受容体をさぐる/実験と結果/大きな反響/マスは痛みを感じている?/各国での研究成果
■第4章 いったい魚は苦しむのか?
「意識」という問題/意識の三つのカテゴリー/魚の空間認知能力――アクセス意識の調査実験/驚異のメンタルマッピング――フリルフィンゴビーの例/どっちが強い?――シクリッドの例/現象意識の探究:感覚力/魚の脳/客観的な情動、主観的な情動/魚の自己意識とは何か?/ウツボとハタの連携/魚は痛みを感じている
■第5章 どこに線を引けるのか?
哺乳類の感覚/生物の階層という考え方/無脊椎動物は痛みを感じるか?/ヤドカリによる実験/甲殻類の情動?/タコ、イカの情動?/不明瞭な線引き
■第6章 なぜこれまで魚の痛みは問われなかったのか?
魚類の誕生/「緑の革命」から「青の革命」へ/釣りの倫理的な問題/動物の権利/ピーター・シンガー『動物の解放』の功績/動物保護運動
■第7章 未来を見据えて
魚の養殖/魚の実験の難しさ/ガイドライン制定の困難/釣り針にかかった魚/キャッチアンドリリースの倫理/釣りにおける魚の福祉の実践/観賞魚に対する倫理/海洋での漁法の倫理/屠殺方法の再検討/よりよき未来への分岐点
訳者あとがき
参考文献
索引
【著者紹介】
ヴィクトリア・ブレイスウェイト
米・ペンシルバニア州立大学教授(生物学・魚類学専攻)。オックスフォード大学博士号(動物行動学)を取得後、魚類の認知や行動の調査研究を行なう。2003年に鱒の痛みの知覚についての共同研究がイギリスで大きな話題を呼び、テレビ・新聞などの取材が殺到する。2006年、彼女の魚類生物学への貢献に対して、イギリス諸島漁業学会から賞を授与されている。
【訳者】
高橋 洋(たかはし・ひろし)
同志社大学文学部卒。IT企業勤務を経て翻訳家。
訳書に『八つの人生の物語』(誠信書房)、『ガイドツアー 複雑系の世界』(紀伊國屋書店)。
内容説明
痛みとは何か?そしてそれを感じるとはどういうことか?魚の「意識」というやっかいな領域に踏み込み、この難問に結論を下した著者は、漁業や釣り、観賞魚などにおける人間の魚への対し方―「魚の福祉」という難題を読者に問いかける。魚類学者のニュートラルな視点による、問題提起の書。
目次
第1章 問題提起
第2章 痛みとは何か?なぜ痛むのか?
第3章 ハチの針と酢―魚が痛みを知覚する証拠
第4章 いったい魚は苦しむのか?
第5章 どこに線を引けるのか?
第6章 なぜこれまで魚の痛みは問われなかったのか?
第7章 未来を見据えて
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