出版社内容情報
認知科学と言語学の「結婚」によって発展した認知言語学についての、世界的に定評の高い教科書の第三版の新訳。 とりわけ認知というプロセスに欠かせない「カテゴリー化」と「プロトタイプ理論」を言語分析に取り入れることで、生きた言語の働きを意味論・統語論的にとらえることを試みる。
ことばの科学に吹く新しい風。<認知言語学>は、旧来の言語学のイメージを一新。認知科学のターム(用語)で言語を視る、人工知能論でも注目の分野です。本書は、その世界的に定評の高い入門書です。
■「本書の特徴とは?」
①「認知言語学」に初めて触れようとする人に向けて書かれた、世界水準の入門書。
②この分野の入門書として世界で10数年使われ続けている高い評価があり、二度に及び改訂を加えた<第三版>の新訳である。
③1996年11月刊行の訳書『認知言語学のための14章』(紀伊國屋書店)との比較でいうと、8章が新規に加わり、続く章は次々と番号がうつり、元の14章の内容は各関連箇所で論じられている。さらに各章の末尾に「研究課題」と「読書案内」を追加、ほかに全体にわたって誤りなどを訂正、新しいデータに差し替わった。
翻訳も「日本認知言語学会」の複数のメンバーによる読み合わせ、訳語の検討をし、全面的に改訂した。
④日本語版では、「さらに学ぼうとする人」のために、日本語で読める本も含む、詳細な文献案内をつけた。
⑤認知科学の諸分野において明らかにされた「カテゴリー化」に関する知見、とりわけ「プロトタイプ理論」を言語分析に取り入れた認知言語学の概説書。(あるカテゴリーの中核には「最良例・代表的事例」があるとみなし、それを中心とした周辺でカテゴリーが構造化されるとみる。この「最良例」のことを「プロトタイプ的事例」とよぶ。たとえば、色彩カテゴリーの「赤」に血を、「緑」に草や木々を、「青」に空を思い浮かべるように)
■言語学の大家、池上嘉彦氏の推薦の言葉
「現代言語学の新しい流れとして登場し、21世紀言語研究のパラダイムとして中心を占めつつある<認知言語学>――この分野に初めて接するという人なら、訳書の中ではこのテイラーの著書が最適だろう。予備知識なしに理解でき、認知言語学の考え方の基本から核心まで、平易で明晰な叙述で読める」
私たちは、複数の個体を「犬」と呼び、まったく姿や形が異なるものに「赤色をしている」と言うーーなぜだろう。「犬」も「赤」もカテゴリーという。
■「本書について」
「人間はカテゴリー化に卓越した生物である。この複雑な物理・社会的世界で活動することが可能なのは、概して、事物、プロセス、人々、制度、社会的関係などを精密にカテゴリー化する能力を私たちが有しているからである」。この一文で始まる本書は、認知というプロセスに欠かせない「カテゴリー化」に関するさまざまな知見を言語分析に取り入れることで、生きた言語の働きをとらえることを試みる。こうした試みは、言語学の新潮流となっているばかりか、人間と文化の本質を探るという意味において、広く人文・社会科学、認知科学・人工知能論などに大きな影響をもたらしている。本書は、その世界的に評価の高い概説書であり、改訂<第三版>の新訳である。
■「認知言語学ってなんだ?」
「認知言語学では、メタファー、メトニミー、スキーマ、フレーム、スクリプト、認知モデル、領域、図と地、輪郭づけ、ランドマーク、トランジェクター、動機づけなど、従来の言語学にはあまり見られない概念が使用されている。認知言語学は、このような認知一般とのインターフェイスに関わる概念とも深く関わりを持ちながら理論的整備が遂行されている点に特徴がある」
■目次
1章 色彩のカテゴリー化
1.1 なぜ色彩用語なのか
1.2 恣意性
1.3 もう1つのアプローチ: 焦点色
1.4 自律的言語学と認知言語学
2章 カテゴリー化に対する古典的アプローチ
2.1 アリストテレス
2.2 言語学における古典的アプローチ: 音韻論
2.3 意味論における古典的アプローチ
2.4 古典的理論の問題点
3章 プロトタイプ・カテゴリー:I
3.1 ウィトゲンシュタイン
3.2 プロトタイプ: 古典的理論への代案
3.3 基本レベル語
3.4 プロトタイプと基本レベル
3.5 プロトタイプの起源
3.6 応用事例
4章 プロトタイプ・カテゴリー:II
4.1 プロトタイプの例
4.2 プロトタイプとスキーマ
4.3 民俗カテゴリーと専門家カテゴリー
4.4 ヘッジ表現
5章 言語的知識と百科事典的知識
5.1 辞書と百科事典
5.2 領域とスキーマ
5.3 フレームとスクリプト
5.4 視点投射
5.5 名詞語句理解におけるフレームとスクリプト
5.6 偽物
5.7 本物
6章 多義性と意味連鎖
6.1 単義的カテゴリーと多義的カテゴリー
6.2 climbの事例研究
6.3 over
6.4 残された課題
7章 カテゴリーの拡張: メトニミーとメタファー
7.1 メトニミー
7.2 メタファー
8章 多義性:語は実際いくつの意味をもつか
8.1 多義性と合成性
8.2 二段階アプローチ
8.3 2つの事例研究:inとround
8.4 多義性とネットワーク・モデル
9章 形態論と統語論における多義的カテゴリー
9.1 格
9.2 指小辞
9.3 過去時制
9.4 Yes-No疑問文
10章 イントネーションの多義的カテゴリー
10.1 イントネーションによって表わされる意味の問題
10.2 下降調と上昇調の意味
10.3 高位基調
11章 文法カテゴリー
11.1 語, 接辞, 接語
11.2 文法カテゴリー
11.3 文法カテゴリーの意味論的基盤
12章 プロトタイプ・カテゴリーとしての統語構造
12.1 構文の必要性
12.2 構文文法の要素
12.3 代名詞所有構文
12.4 他動詞構文
12.5 他動詞構文:周辺的な成員
12.6 メタファーによる統語構造の拡張
12.7 ドイツ語との比較
12.8 結語
13章 音韻論におけるプロトタイプ・カテゴリー
13.1 音素カテゴリー
13.2 音韻素性の段階性
13.3 音節構造
14章 カテゴリーの獲得
14.1 獲得経路の仮説
14.2 文法カテゴリーと構文
14.3 概念の発達
14.4 語の意味
■著者紹介
John R. Taylor
英国生まれ。ケンブリッジ大学にて学士号(現代言語)、レディンゴ大学で修士号(イタリア語)、ドイツのトリア大学で博士号(言語学)を取得。ドイツや南アフリカで教えた後、現在はニュージーランドのオタゴ大学言語学科で教鞭をとっている。著書には本書のほか、Possessives in English :An Exploration in Cognitive Grammer(1996),Cognitive Grammar(2002)を同じOxford大学出版局より刊行している。なかでも本書は認知言語学の入門書として世界的に高く評価されている。
●関連本
内容説明
本書は、認知科学の諸分野において明らかにされた「カテゴリー化」に関する知見、とりわけプロトタイプ理論を言語分析に取り入れた認知言語学の概説書…メタファー、メトニミー、スキーマ、フレーム、スクリプト、認知モデル、領域、図と地、輪郭づけ、ランドマーク、トランジェクター、動機づけなど、従来の言語学にはあまり見られない概念が使用されている。…認知言語学は、このような認知一般とのインターフェイスに関わる概念とも深く関わりを持ちながら理論的整備が遂行されている点に特徴がある。
目次
色彩のカテゴリー化
カテゴリー化に対する古典的アプローチ
プロトタイプ・カテゴリー
言語的知識と百科事典的知識
多義性と意味連鎖
カテゴリーの拡張:メトニミーとメタファー
多義性:語は実際いくつの意味を持つか
形態論と統語論における多義的カテゴリー
イントネーションの多義的カテゴリー
文法カテゴリー
プロトタイプ・カテゴリーとしての統語構造
音韻論におかるプロトタイプ・カテゴリー
カテゴリーの獲得
著者等紹介
テイラー,ジョン・R.[テイラー,ジョンR.][Taylor,John R.]
英国生まれ。ケンブリッジ大学にて学士号(現代言語)、レディング大学で修士号(イタリア語)、ドイツのトリア大学で博士号(言語学)を取得。ドイツや南アフリカで教えた後、現在はニュージーランドのオタゴ大学言語学科で教鞭をとっている
辻幸夫[ツジユキオ]
1956年生。慶應義塾大学大学院後期博士課程。現在、慶應義塾大学教授
鍋島弘治朗[ナベシマコウジロウ]
1961年生。大阪大学博士前期課程・カリフォルニア大学バークレー校博士前期課程。現在、関西大学准教授
篠原俊吾[シノハラシュンゴ]
1963年生。慶應義塾大学大学院後期博士課程。現在、慶應義塾大学准教授
菅井三実[スガイカズミ]
1965年生。名古屋大学大学院博士後期課程。現在、兵庫教育大学大学院准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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