出版社内容情報
全ての動物が共有し、種の生存に役立つ「良性の攻撃」と、人間固有の、破壊性を伴う「悪性の攻撃」とを峻別。後者の諸形態を総括的に考察する。<初版1975年> ※上下2巻であった旧版を合本して復刊。
内容説明
人間の歴史は暴力と破壊と残酷の記録で満ちている。他の動物と違って人間だけが何の理由もなしに生命を破壊することに快楽を覚えるようにみえる。人間には人間独自の潜在的破壊性があるのだろうか。このような問いから出発する著者は、まず最初に、人間がすべての動物と共有する、防衛的で反射的な「良性の攻撃」と、人間に特有な、破壊性や残酷性を伴う「悪性の攻撃」とを峻別する。さらに、人間の性格に深く根ざした情熱(愛、憎しみ、権力への渇望、羨望…)の一つとして破壊性をとらえるという視点から、「悪性の攻撃」の性質とその発達の諸条件を様々な角度から考察。破壊的性格を代表するものとして、生命あるものを死へと変貌させる情熱(ネクロフィリア)とサディズムをとりあげ、スターリンやヒトラーの性格分析にも多くの頁を割いている。『自由からの逃走』以来、著者が一貫して追究してきたテーマの一つである人間の破壊性に関する総括的研究とも言うべき本書は、同時に優れた文明論としても読むことができるだろう。
目次
本能と人間の情熱
第1編 本能主義、行動主義、精神分析(本能主義者たち;環境主義者たちと行動主義者たち;本能主義と行動主義―相違点と類似点;攻撃を理解するための精神分析的アプローチ)
第2編 本能主義的命題への反証(神経生理学;動物の行動;古生物学;人類学)
第3編 さまざまな攻撃と破壊性およびそれぞれの条件(良性の攻撃;悪性の攻撃―その前提;悪性の攻撃―残酷性と破壊性;悪性の攻撃―ネクロフィリア;悪性の攻撃―アドルフ・ヒトラー、ネクロフィリアの臨床例)
著者等紹介
フロム,エーリッヒ[フロム,エーリッヒ] [Fromm,Erich]
1900年ドイツ・フランクフルト生まれ。ハイデルベルク、フランクフルト、ミュンヘンなどの大学で学んだのち、ベルリン大学で精神分析を学ぶ。フランクフルト社会研究所を経て、1933年アメリカに渡り、のちに帰化。イェール、ミシガン、ニューヨークなどの大学で教鞭をとり、さらにメキシコに移住。1980年逝去。フロイト理論にマルクスやヴェーバーを接合して精神分析に社会的視点をもたらし、いわゆる「新フロイト派」の代表的存在とされた
作田啓一[サクタケイイチ]
1922年生まれ。1948年京都大学文学部哲学科(社会学専攻)卒業。京都大学名誉教授
佐野哲郎[サノテツロウ]
1931年生まれ。1959年京都大学文学部大学院修士課程英語学英米文学専攻修了。京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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