出版社内容情報
判 型 46判上製
ペ ー ジ 204頁
本 体 価 1,800円
須賀敦子、柳美里、中沢新一等が絶賛した『砂の子ども』の作家が放つ16
篇の愛の物語。
夫を共有しようとした二人の美女の企み、王様の愛を拒んだアラブ歌謡界の歌姫
の運命、美青年に恋をした老外交官の結末……傷つけあいながらも求め合う男女
の恋愛模様を描いた短編集。「愉快で遊び心があり、奇跡とからかい、悪意と詩
情に満ちた書物」(ル・クレジオ)と絶賛された待望の一冊。
目次:
狂おしい愛/美女の策略/青い蛇/愛をめぐる三面記事/ミラージュ/最初の愛
はいつも最後の愛/恋物語を書いていた男/わが心の地中海/ペトラのアイーダ
/巴里の恋/美しい嘆き/ヴィト氏の自己愛/お祭り騒ぎの嫌いな男/老人と愛
/憎しみ/多妻の男
内容説明
「現代のアラビアンナイト」と絶賛され、モロッコ人として初めてゴンクール賞を受賞したベン=ジェルーンによる待望の短篇集。一人の男を共有しようとたくらむ二人の美女、夢のお告げを無視した蛇使いの結末、浮気症の夫に呪いをかける若い妻、美青年を愛した外交官の運命―官能的なアラブの恋愛模様を描いた16の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
72
モロッコの作家が紡ぐ時に真摯で、時に滑稽な愛の形。それはどこの国でも変わりはないのだろう。あらすじでは「官能的なアラブの恋愛模様」という惹句でしたが、私が定義している「官能的」とは違ったので拍子抜け。「狂おしい愛」は歌姫サキナの世間知らず故のロマンチックさにイライラしていたら案の定・・・。「愛を巡る三面記事」、「恋物語を書いていた男」は笑っちゃうしかない。個人的に「青い蛇」が好き。特に最後の「ね、分かるでしょ。私はそれほど意地悪じゃないのよ・・・」という言葉が限りなく、優しい。2017/12/10
syaori
28
表紙と扉に使われたバルビエのイラストの雰囲気がぴったりな短編集です。モロッコ生まれパリ在住という作家が紡ぐ物語は、ヨーロッパ的な雰囲気に北アフリカやアラブあたりの異国の香りと倦怠感が漂い、少し幻想的です。そんな美しく幻想的な愛を巡る短い物語を次々と読んでいくのは、シャンパングラスの底から立ち上がっては消えていく泡を一人で眺めて楽しむときのような、華やかで少し寂しい気持ちになりました。ある避暑地のホテルの様子を断片的に描く『ミラージュ』、魅力的な歌姫を主人公にした甘美で残酷な『狂おしい愛』などが好きでした。2016/05/25
ヘラジカ
13
モロッコ人作家による詩的な短編集。実際には知らないアラビアの空気がむっと漂う。訳者は「エンターテイナーの資質がある」と仰るが、ほぼ全作品物語としての面白さはあまり感じられない。むしろ作中の言葉を借りると「絶望的なまでにありふれた物語」が殆どを占める。この短編集の楽しさはそのありふれた物語を、並外れて官能的な生活や、異性に対する濃厚な愛憎が、限りなく深く見せている点にある。男と女が抱えるアンビバレンス、愛と欲望の様々な姿。これらを生々しく或いは幻想的に描く流麗な筆致、これが良い。2013/05/03
ayako
7
とてもうつくしい本、栞の色はだいすきな薄ピンク。表紙の絵はだいすきなバルビエ。大事に時間をかけて読んだ短編集。現代版千夜一夜物語とのことだが、どのお話からもうつくしさと残酷さとエロティシズムが感じられ、性愛についてあらためて考えさせられた。あとがきを読み、この作家の考え方がとてもすきだと思った。2019/03/05
きりぱい
4
幻想譚的で物語の多様なところが一瞬イサク・ディネーセンを思わせるけれど、まあ違うな。アラブ的(多分)な恋愛模様なんて、表現はなかなかあけすけにエロティック。「狂おしい愛」「美女たちの策略」「愛をめぐる三面記事」辺りが好み。2017/06/14