出版社内容情報
世紀末の〈現在〉はどういう時代であり,どこへ行こうとしているのか。
今日,重要な思想的・政治的課題とはなにか。
ユートピア喪失の現在における知識人の役割とは?
フランスと日本をそれぞれ代表する,この歴史的ともいえる二人の思想家の出会いの全記録。
ポスト冷戦の世界認識から消費資本主義社会の〈死〉の問題まで,熱い議論をたたかわす。
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吉本隆明氏が提起した「消費者のリコール権」の問題をめぐって二人の見解は一致を見ることはなかったし、
ボードリヤール氏の「起源の不在」めぐる日本論に吉本氏が納得することもなかった。
しかし、その場かぎりのあいまいな同意をけっして求めようとしない二人の思想的誠実さと、
世紀末の過剰消費社会が陥ったカオス的状況の一歩先を見すえようとする真剣な態度は、
すくなくとも私にとって感動的なものだったし、
それは現場にいあわせた人びとの多くに共有された感想だったのではなかっただろうか。
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世紀末のカウント・ダウン (ボードリヤール講演)
カウント・ダウン
終末の幻想の彼方へ
現実の過剰とユートピアの喪失
欲望の充足と現実世界からの追放
アクティング・アウト
「歴史の終わり」という幻想
<悪>の透明化
ユートピアとイデオロギーの不在
亡霊化した現実
<他者性>の喪失
人工的な<他者性>の生産
完全犯罪
他者をもたない主体
パタフィジック的世界
消費が問いかけるもの (吉本隆明講演)
消費資本主義社会とは
潜在的な権力は大衆の手に
リコール権を明文化する
レーニンができなかったこと
憲法第九条
日本社会の特徴
「死」にいたる三つの条件
「死後」の社会をイメージする
消費がいまの社会を解く鍵
好景気と不況を測るものさし
親鸞の「死」の見方
「死」の場所から見えるもの
対論 (ボードリヤール×吉本隆明)
消費社会の<死>と「死後の世界」
経済的リコール権の行使
日本の<特異性>をめぐって
会場からの質問に応えて
対論(続き) (ボードリヤール×吉本隆明)
ポスト冷戦の世界認識
イスラム原理主義をめぐって
消費者の抵抗
ユートピアの喪失と知識人の役割
過剰の時代の倫理と理念
雑談風に
ヴァーチャルなイリュージョン または世界の自動記述(ボードリヤール講演)
TV番組化した生活
「リアル・タイムで生きなさい」
レディ・メイドの現実
インターフェイスの中の世界
世界の加速された終わり
自動化された世界の夢
人間の消滅の危機
世界の自動記述の種類
思考という幻想の消去
「完全犯罪」を超えて
幻想の終わり
会場からの質問に応えて
顔のないシステム、顔のないテロル (ボードリヤール)
TVの画面が現実を隠す
端役にすぎぬ政治家
冷静な被災者に注目
破局から何を学ぶか
システムの終末へのカウント・ダウン
カオス的混乱の中から
普遍的なものに対立
完成への意志に抵抗
顔のないシステム、顔のないテロル (書き下ろし)
臨界状態に達した大衆社会
大震災と毒ガス事件のあいだ
あとがき(塚原 史)
内容説明
フランスの社会学者にして著名な思想家であるジャン・ボードリヤールの来日を記念して、日本を代表する思想家・吉本隆明との講演会「世紀末を語る」が開催された。対論は、世紀末の現在をどうみるか、消費過剰の社会は今後どうなっていくのか、今日における重要な思想的・政治的課題とはなにか、ユートピア喪失の現在における知識人の役割など、幅広いテーマをめぐってたたかわされた。本書は、この歴史的ともいえる二人の出会いの全記録を中谷に、ボードリヤールの訪日のその他の発言を収録したものである。
目次
世紀末を語る―あるいは消費社会の行方について(ボードリヤール×吉本隆明)
ヴァーチャルなイリュージョン(ボードリヤール講演)
顔のないシステム、顔のないテロル(ボードリヤール)
感想・レビュー
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令和の殉教者
かめすけ
Bevel