感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鴨長石
1
もう長いこと巷では健康ブームだが、今までは宗教のように健康を追い求める人々を単に馬鹿にしていた。しかしコロナ禍により、このような「健康教信者」が多数派で、世界を動かすまでの力があることに遅まきながら気づいて愕然となった。本書は、そもそも完全な健康という概念自体がユートピアのような幻想であるということを看破する。健康とは各個人と環境との相互作用の中での適応であり、人により、また見方により健康かどうかは変わる。人生の目的が健康であるはずがなく、健康は一手段に過ぎないということを何とか周りの人に伝えていきたい。2021/03/12
たつなみそう
0
健康を、環境(細菌を含む自然と社会)と人体の間の生態学的平衡としてとらえる視点は新鮮だった。抗生物質の発見のずっと前から、感染症は衛生環境や栄養改善で減りはじめていたこと。そして、ストレスもひずみもないエデンの園は怠けものの夢にすぎない。生物のなかで人類のみが危険を顧みず挑戦しつづける種であるかぎり、平衡攪乱として病気はかならず現れる。健康と病についての素晴らしい洞察と示唆に満ちた本である。1959年に書かれたものだが、まったく古びていない、むしろ、現代の医学の問題を示唆するタイムリーな内容と感じられた。2017/07/17