出版社内容情報
明治から現代までの作家の名品を、作品の時代背景順に収める『近現代作家集』。Ⅲ巻には日本文学の未来を切り拓く18篇を集成。
内容説明
昭和から平成、「3・11」、そして宇宙へ。日本文学の未来を切り拓く18篇。
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年北海道生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
113
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ第ニ十七弾です。本チャレンジも残すところ大トリの源氏物語3冊だけなりました。本巻は大分現在に近づいているので、魅力的な作品が多いですが、オススメは村上 春樹の『午後の最後の芝生』、筒井 康隆の『魚籃観音記』、川上 弘美の『神様&神様2011』です。角田光代版『源氏物語』は9月から刊行されますが、大変楽しみにしています。2017/08/12
KAZOO
102
これがこの全集の最終巻であと3冊は源氏物語を残すのみです。ここには内田百閒から円城塔までの18人の作家(当然池澤さん自身の作品も収められていますが)の作品集です。池澤さんの好みがかなり反映されている気がします。私は野呂邦暢、堀江敏行、多和田葉子の作品がやはり大好きです。2017/08/21
keroppi
35
なんと贅沢な作品集だろう。内田百閒がいて、村上春樹がいて、筒井康隆がいて、…円城塔が締め括る。自由な作風と発想の飛躍。女性作家の充実もある。描かれる歴史順に配置されていた近現代作家集1.2だったが、その最後は3.11による文学の転換に置かれた。文学の力を感じて読み進めたこの日本文学全集、残すところ、角田光代の源氏物語のみとなった。早く読んでみたい。2017/08/05
松本直哉
30
気が向いたものだけ何編か。こじあけられて核を挿入される真珠貝の痛みと、夫からの暴力に耐える妻のそれが共振する稲葉真弓「桟橋」が素晴らしかった。来る日も来る日も海岸で日がな一日鳥を観察し、傷ついた鳥を介抱する孤独な男の肖像を描く野呂邦暢「鳥たちの河口」も。通夜の夜半妻の亡骸に添い寝する男のエロティシズムを描いた河野多恵子「半所有者」も。村上春樹「午後の最後の芝生」を読むのは何回目だろう。結末まで知っているのに時間をかけて味わって読んでしまう。夏の光とひんやりした台所と主のいない部屋と。2021/05/31
ぐうぐう
29
『近現代作家集』その三巻目には、1968年から2011年までに書かれた小説が収録されている。先の二巻に比べると、戦争の時代を離れた開放感からか、あるいは、単純に文学が成熟していった結果か、とても自由な作風を感じる。自由とは、制限を知るからこそ覚えることのできる感覚のことだ。自由に憧れるだけで自由になれるわけではない。力を身に付け、たっぷりと助走に時間を掛けることで、制限であるところの壁を越えられる。壁を越えてこそ、自由を獲得できる。その跳躍を可能とするのは、覚悟と才能だ。(つづく)2017/07/23
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