内容説明
人類は約700万年前にチンパンジーとの共通祖先から分かれ、独自の進化を遂げた。やがて言葉を獲得したことによって「認知革命」が起きたとされている。しかし、実はその前に、もっと大きな革命があった。それが「共感革命」だ。
目次
序章 「共感革命」とはなにか―「言葉」のまえに「音楽」があった
第1章 「社交」する人類―踊る身体、歌うコミュニケーション
第2章 「神殿」から始まった定住―死者を悼む心
第3章 人類は森の生活を忘れない―狩猟採集民という本能
第4章 弱い種族は集団を選択した―生存戦略としての家族システム
第5章 「戦争」はなぜ生まれたか―人類進化における変異現象
第6章 「棲み分け」と多様性―今西錦司と西田幾多郎、平和への哲学
第7章 「共同体」の虚構をつくり直す―自然とつながる身体の回復
終章 人類の未来、新しい物語の始まり―「第二の遊動」時代
著者等紹介
山極壽一[ヤマギワジュイチ]
1952年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。理学博士。人類学者・霊長類学者。京都大学総長を経て、2021年より総合地球環境学研究所所長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ta_chanko
20
身体能力に劣る人類がサバンナに降り立って生きていくためには、群れで生活し互いに協力しあう必要があった。そのために発達したのが「共感」力。言葉よりも前に歌やダンスで身体のリズムを同調させることでコミュニケーション力や共感力を高めた。直立二足歩行により道具を扱うとともに、食べ物を仲間のために運ぶことが可能になった。性を隠し、食事を仲間と分かち合うのは動物とは逆の行動。群れ(社会)の適正規模は150人程度=ダンバー数。農耕により社会・国家の規模は拡大したが、それをまとめたのが宗教の役割。現代は第二の遊動時代へ。2023/12/18
ちょび
9
山際氏はゴリラを通して人間社会を観る。ゴリラにも無い白目を人間は持つ。目の動き(視線共有)から相手の気持ちを読み共感し、共鳴し、同情しその上に思いやり深い同情のコンパッションを持つ。この共感力を持つ人の集団の適正サイズは上限150人程度でそれ以上では意思疎通が難しくなるそう。グローバル化で無限に繋がりが拡がる様に感じるのはただの錯覚で、かえって分断が進んでいるのが現実だ。思考から生活まで内向化する今「動く自由、集まる自由、対話する自由」をうまく使い小規模な集団を繋いで行くことで閉塞した社会が変化すると言う2024/07/31
門哉 彗遙
7
最初に生まれたコミュニケーションは言葉ではなく、音楽やダンスだっただとか、白目があるのは人間だけで、それは視線共有をするためだとか、最初はとても面白かった。でも京大総長時代に、学生としっかり話し合うこともなくある事件で四人の学生を放校処分したことを知り、この人の共感も眉唾だなと思いながら最後まで読んでしまった。人間には「動く自由」「集まる自由」「対話する自由」があるとこの人は書いてるねんけどなぁ。2023/11/18
Asakura Arata
7
共感能力が、諸刃の剣ということがわかった。共感能力が良い方に働く条件として、150人以内のコミュニティで、所有に拘らず身軽に移動することを実行していくことか。まさに「風の時代」だな。2023/11/14
シュレッダ
6
山極さんはやはり良い。体験してきたことを試行錯誤しつつ飲み込んで1冊にする。新書じゃなくても追いかけて買いたい価値がある。2024/04/11