出版社内容情報
格差論の決定版、現代日本論必携の名著を、10年の時を経て、新データも加えながらアップデート。この社会はいかにして生まれたか。
内容説明
この社会はいかにして、現在のようなかたちになったのか?敗戦、ヤミ市、復興、高度成長、「一億総中流」、バブル景気、日本経済の再編成、アンダークラスの出現…「格差」から見えてくる戦後日本のすがたとは―根拠なき格差論議に終止符を打った名著『「格差」の戦後史』を、10年の時を経て、新データも加えながら大幅に増補改訂。日本社会を論じるならこの一冊から。
目次
序章 舞台装置は階級構造―「フィガロの結婚」と「天国と地獄」をめぐって
第1章 格差をどうとらえるか
第2章 格差縮小から格差拡大へ―戦後日本のメガトレンド
第3章 貧しさからの出発―敗戦から一九五〇年まで
第4章 「もはや戦後ではない」―一九五〇年代
第5章 青春時代の格差社会―一九六〇年代
第6章 「一億総中流」のなかの格差―一九七〇年代
第7章 格差拡大の始まり―一九八〇年代
第8章 日本社会の再編成―一九九〇年代
第9章 新しい階級社会の形成―二〇〇〇年代
第10章 アンダークラスの時代―二〇一〇年代
著者等紹介
橋本健二[ハシモトケンジ]
1959年、石川県生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。専攻は社会学。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
25
とてもしっかりとした研究だ。しかも読みやすい。一口に格差といっても、それがどのように変化してきたのか、また階級というものの変遷とからめて考えることができた。僕はマルクス主義の階級論は、今日の日本社会の格差や階級、貧困を捉えるうえでベースになると思っているが、著者はマルクスに対する評価は違えど、実証的に明らかにしていく方法論には、とても共感でした。多くの人に読んでほしい一冊。2020/04/25
おおた
19
日本の階級社会は80年代から加速していき、90年代に日経連(現経団連)が終身雇用を見直し、小渕首相の下で成果主義を求める方針が決まる。2000年代に入って男性の非正規労働者が増えると共に貧困率も上昇、技術と能力がない人々はアンダークラスに追いやられて階級社会がますます進行しているのが現在。社会人になって非正規労働者と正社員をいったりきたりの自分にとっては、肌感通り。社会全体では少子化による若年層の負担が語られてきたけれども、そこに階級社会がのしかかると一層生きていくのが困難な国になっていくのだろう。2022/08/11
かんがく
9
とにかくデータが豊富かつ緻密で、グラフもみやすいので格差と階級の実像がよくわかる。一方で、単なる数値の羅列にはならず、サザエさんやあしたのジョーなどのサブカルチャーや社会史の記述も多く、バランスの取れた構成になっている。東日本大震災についての分析はなるほどといった感じ。2020/11/19
Masatoshi Oyu
6
戦後日本の階級の分析から、格差や貧困の問題を論じる。 昨今格差問題に焦点があてられ、よく小泉改革が主因とされる。しかし本書によれば、日本での格差縮小は敗戦直後の混乱期と高度成長期のみである。そして問題なのは、日本は格差そのものをあまり問題とはとらえず、寧ろ格差を拡大させる政策をとり続けてしまったということで、その結果、若年非正規労働者が「階級より下の階級」として厚い貧困層を形成してしまっていること。格差・貧困問題の解決は急を要する課題であると分かる。作者によれば、機会の平等は論理的にあり得ない。2021/12/25
鵐窟庵
5
日本の戦後の階級と格差を10年毎に統計データを用いて分析。資本家階級と労働者階級の間に新中間層と旧中間層の新たな誕生を見出して四階級間での移動や割合変化を追っている。各々の時代の社会的要因もとして時代ごとに新たに生まれてくる職種や職業の需給の変化が挙げられる。一攫千金を掴みに東京へ上京してきたが必ずしもその夢は果たされずに東京蟻地獄へ吸い込まれていく階層はどの年代のどの世代にも一定数いたため、出自が資本家階級であっても決して安定して続く訳ではない。結論は近年のアンダークラスの増大に日本の将来を憂いている。2020/12/25