内容説明
路面電車に乗り込んで消えた自動人形をさがせ。単行本化されなかった幻の初期作品が甦るデビュー10周年企画。書下し装画、詩篇に加え見返しには自筆生原稿も。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
75
2人の少年の織りなす世界が好きです。真夜中の博物館、逃げ出した自動人形の三日月少年、夜明けの町の路面電車、幻想的な雰囲気が漂います。博物館から消えた三日月少年を追いかける睡蓮と銅貨が愛らしくてたまりません。食事シーンも多く、食べ物がどれも美味しそうでした。とても神秘的で、独特の綺麗な色彩を見たようです。併録されている『銀色と黒蜜糖』の醒めない夢の世界も素敵です。月彦に柘榴を食べさせる場面が美しい。曖昧になる世界に囚われる感覚がありました。愛おしい煌めく世界が閉じ込められているようですね。2015/09/26
❁Lei❁
11
幻の初期作品集。街から逃亡した三日月少年というお人形の行方を、二人の少年・水蓮と銅貨が追いかける物語です。夜中に家を抜け出し、待ち合わせ場所へ向かうワクワク感が楽しい。長野作品ならではの非日常感や、二人だけの秘密の共有……憧れの世界です。2025/04/23
yajimayajiuma
10
基本的な印象は「夏至祭」と共通。少年達が遭遇した不思議な出来事を、古風な言い回しで語る。釦(ボタン)だの天鵞絨(ヴェロア)だの、漢字での表記がレトロな雰囲気。三日月少年達は痕跡も残さず去ってしまい、幻想的な質感だ。前述のような文体は概ねいい方向に作用しているが、ゝのような繰り返しや「じゃ」を「ぢゃ」と表記する等は、少々くどいかもしれない。夏至祭が不思議な出来事を終始不思議として扱っていたのに対し、本作は途中からはあまり疑問がなくなっていたように感じた。水蓮がなんでも解決してしまうのも簡単過ぎるように思う。2025/02/07
himawa
10
長野さんの初期作品を集めた作品集「少年万華鏡」という4冊セットの1冊目。読メ友さんに3冊目を紹介していただいて、とても素敵だったので、全冊読んでみようと思って。よかった。三日月少年が凄く神秘的で「怖い綺麗」?って感じ。銀色と黒蜜糖そして月彦も今後どう展開していくか楽しみ。紅玉色(るびいいろ)の柘榴とか、緋い(あかい)魚、からすびしゃくの葉の雪白と草色とか、色の表現が幻想的な映像を見ているよう。2014/01/22
凛
9
彼女の小説は初めて。”三日月少年漂流記”と”銀色と黒蜜糖”の二編収録。足穂を薄めて児童文学っぽくしたもの、かな。表現や小難しい漢字からは気取ってる雰囲気しか感じられず、上っ面の綺麗な所を見せられた気分で上手く物語に入り込めなかった。二作とも、ものすごぉく『青い月の物語 /小浦 昇』を彷彿させる話だった。本作が先なのでインスパイアされた部分があるのかな。2013/12/22