感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sabosashi
9
イギリスはもともとが階級社会であるために、作家も貴族階級によって成り立ってきていて、労働者階級出身の作家というとこのロレンスあたりが、最初の例になる、なんていうことは丸谷才一あたりからの受け売りに過ぎないのだが。 冒頭、炭鉱一家の暮らしがリアルに描かれ、イギリス資本主義の底辺のひとつを垣間見る。 だが夫婦関係、家族関係にねじれがみえてくる。 そんなことは古今東西、どこにでもありふれていること。 しかし著者はぐいぐいと問題を鋭く浮き上がらせていく。 2017/02/13
noémi
8
作者の代表作『チャタレイ夫人の恋人』とかなり雰囲気が異なる。前者は男女間の抱擁の美しさを余すところなく描き、読んでいて素直に登場人物の感情に同調できる。が、この本の主人公(ロレンスの分身なのだろうが)は、大変複雑な人物で、階級の違う両親の不幸な結婚によって、自己を統合できない多大な犠牲を払わされている。しかも母は息子を完全に支配し、精神的に彼は彼女の恋人だ。そのため主人公は、恋人ができても、どこかで感情が止揚する。だが母の死で彼は解放され、恐らくこれから自分の足で一歩ずつ人生を模索していくのだろう。2013/06/18
viola
5
簡単に言ってしまえば、親離れ出来ていない息子と子離れ出来ていない母親の物語。D. H. ロレンスの自伝的小説だそう。主人公に完全に感情移入することは出来ないけれど、ところどころ物凄く共感できるポイントがあったりと、ロレンスは不完全な人間(と性を)描くのがとても巧いのかもしれない。なかなか面白かった。2段組みで約500ページ。合計するとかなりの文字数になるため、読むのがなかなか大変でした。個人的には『チャタレー夫人の恋人』のほうが優れている気がしましたが、ロレンスの傑作と名高い作品のようです。2012/05/05