内容説明
中世とは何か、大唐帝国の統一を歴史全体の観点から捉え、数量史観で平易に描いた名著。
目次
谷間の時代
天下三分
西晋の統一
民族大移動
江南の別天地
南風競わず
胡馬のいななき
新軍閥の勃興
大唐帝国
唐王朝の変質
中国中世の終幕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
牧神の午後
4
タイトルの唐に至までが長く、大半は南北朝、五胡十六国で、そして隋を駆け足で通り越して、唐の分量もこんなもの?と少々肩透かし。ただ、随所に見られるヨーロッパ同時代、中世との比較は興味深く、ある意味人間の営みなんて似通ってくるのか、とすら思える。2018/11/10
kapo54
3
魏晋南北朝を丁寧に解説することで、唐朝の性質も分かるという構成。なので、唐に関する記述は少ない。宮崎先生はいろいろな見方を提示してくれるので面白い。そして、中世ってほんと血なまぐさい。漢民族と遊牧民を文明と野蛮の対比にしてしまうのは、時代的制約からして仕方ないのだろう。それを補って余りある面白さ。2017/06/07
JS
2
「大唐帝国」というタイトルながら、魏晋南北朝時代から始まり、残りページ約2割になってようやく唐の時代に突入、という構成に面食らったが、著者によれば、「従来の史家はともすれば唐を以て唐を説明するの方法を用いようとするが、実はそれでは解答にならない。 」とのことで、読めばそれも納得。「中世」をキーワードにヨーロッパ史といちいち対比しているのがとても面白かった。2016/10/27
無職さん㌠
2
宮崎市定著『大唐帝国』再読。やっぱ何回読んでも面白いわ。漢化政策に転換した北魏が、カトリックを受容したメロヴィング朝に比せられていたが、それでいうと前秦=東ゴート王国かな?どちらも文明の正統継承者の東晋=東ローマとの抗争がきっかけで滅んでるし。2016/10/04
富士さん
2
前漢を都市国家の共同体として、ローマ帝国に等しいという論を初めて読んだ時は衝撃でした。中国はずっと中央集権的な領域国家で自治という観念と結びつかなかったのは、内面化された西洋的偏見なのかもしれません。中国史と西欧史のシンクロへの本書の言及は、それぞれの地域にはその場所に合った進み方が有り、しかも人の営みの枠内で大きく偏ることがないという文化人類学的な視点を感じます。その反面、理解不能な蛮行を何でも遊牧民に結びつけて理解しようとするのが目立つのは、この時代の宮崎先生の素朴な文明信奉が見えるような気がします。2015/09/25