内容説明
孤独や秘密をかかえる人や、ままならない日常を生きる人の人生と、その背後にある中国の歴史、文化、政治が交錯し、驚くほど豊かな物語を紡ぎ出す。映画化もされた表題作「千年の祈り」ほか個性の際立つ十編を収録。デビュー作にして、フランク・オコナー国際短編賞、PEN/ヘミングウェイ賞ほか、名だたる賞を多数受賞した不朽の傑作短編集。
著者等紹介
リー,イーユン[リー,イーユン] [Li,Yiyun]
1972年北京生まれ。北京大学卒業後、アイオワ大学大学院で免疫学の修士課程修了。その後、同大学院の創作科に編入。2005年『千年の祈り』で作家デビューし、多くの文学賞を受賞
篠森ゆりこ[シノモリユリコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じーにあす
25
10の短編集。母国を離れ母語である中国語ではなく英語で著者は物語を編む。母国を離れてはいても描かれているのは近い過去や現在の抑圧された中国の人々だ。言葉一つで処刑されたり古い慣習に縛られたり明らかに間違った国の考え方も受け入れなければならない人々の姿が感傷的に響いてくる。読後に感じるのは何処か諦念であったり分かり合えない哀しさなのかもしれない。アメリカや資本主義国への憧れも見られる。中国と言うともっと雑な印象があったけれど、様々な葛藤と戦いながら生きる人々の姿が描かれていた。「あまりもの」がお気に入り。2025/02/23
海燕
21
すばらしい短編集。しかもこれが翻訳とは信じられない。学生時代から、訳文にぎこちなさを感じたことが原因で、海外の文学にはあまり手を出せずに今に至っている。篠森ゆりこ氏の、翻訳とは思わせない訳出の巧みに敬服するばかり。驚いたことには、著者は全ての作品を英語で書いているとのこと。現代中国文学と思って読み始めたのだが、英文学だった。だが描かれているのは中国の社会であり、政治や思想に関する内容もあり、それは中国語でなく英語で書くことと大きく関係があるようだ。好みは、宦官を輩出する町を扱った「不滅」と表題作。2024/05/31
播州(markⅡ)
7
読み進めていると絶えず脳裏に去来したほんまきょ…政治批判や民族批判はいったん脇にどけておいて、それでも人は生きていくしかないというすごみを感じられた。修百世可同船真摯な祈りによって今があるというのなら日本は、中国は、世界はどんな祈りによって積み上げられているのだろう。 魯迅の故郷をほうふつとさせる静謐で豊かな読書でした。2024/11/06
kankoto
5
様々な作品で編まれていてそれぞれ全部違う。底に漂っているのは中国の厳しい時代、現在を生きている人々。ふっと終わってしまう作品も多くてこちら側がどう捉えれば良いのかと戸惑う作品も多い。決してそれが嫌というのではなく、長く深い余韻を残す。 「不滅」、「市場の約束」は衝撃的。「死を正しく語るには」ある種、ノスタルジーを感じる。「ネブラスカの姫君」も好きだな。 自分の頭の中の切り取られた瞬間を反復する事の幸せ。2025/02/05
みゃお
5
近くて遠い隣人の短編集。 作家の人生も作品になりそうな経歴。 ”母語で話せないことを 獲得した他言語でなら語れる。” なんとなくわかるような気がします。 言葉は、文化や歴史でもあるのだろうと。 知らずに呪縛されていることも。 2024/01/28