出版社内容情報
隠蔽された真実の告発を目的に創刊準備号の編集に取り組む記者たち。嘘と陰謀と歪んだ報道にまみれた現代社会をえぐる警鐘の書。
ウンベルト・エーコ[エーコ,ウンベルト]
著・文・その他
中山 エツコ[ナカヤマ エツコ]
翻訳
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
65
「決して出ることのない日刊紙の準備にかけた一年間を語る本」を書かないかと持ちかけられた語り手の4月から6月まで。真実を暴くという名目で発刊される予定のその新聞、業界の裏話を書くぞと脅せば関係者が手を回して便宜を図ってくれるはずとの出資者の意図によるもので、モデルはベルルスコーニ元首相。創刊準備号の編集会議はジャーナリズムの情報操作の暴露であり、エーコの痛烈な揶揄だ。ジャーナリズムの裏側を暴く一方で、一人の記者がムッソリーニに関するある陰謀を追い始めるのたが、この作品のもう一つのテーマ「記憶」。⇒2022/09/18
三柴ゆよし
30
あまり食指の動かないあらすじだな、と思っていたが、オモローな小説だった。世に出ることのないoneのためにzeroを創造する記者たちの営為が、そのまま歴史の闇に葬られた真実(という妄想あるいはパラノイア)へと導かれていくスリリングな展開は、舞台を現代に移しても、陰謀大好き作家エーコ先生の面目躍如だろう。語り手コロンナが、比喩と引用を通して世界を見る癖を持っているのに対して、物語の重要な担い手となる記者ブラッガドーチョ(braggadocio ⇒ 大ボラ吹き)は記号的事実の裏側に意味を見出していくタイプの人。2018/11/21
そふぃあ
28
報道の影の部分を暴く小説。風刺されてるのはイタリアのマスコミだけど、日本も同じことをやっている。受け手に歪曲した先入観をを刷り込ませるやり口を知っておけば、嘘に騙されずに済む。 あと、本書で語られる歴史部分は事実なので、イタリアの近現代を知ることもできた。 オットー・スコルツェニーは『鷲は舞い降りた』にも登場する。2019/01/24
阿部義彦
25
ウンベルト・エーコ生前最後の長編。フェイクニュースや陰謀論が溢れる現代をまさに先取りしている内容。まさに小説家=炭鉱のカナリアか!そこで、唐突にコレって筒井康隆さんの「新宿コンフィデンシャル」ではないか!と思い当たりました。イタリアの政治には疎いので、イマイチ分かりにくかったかも知れません。だが、ラストでテレビ番組によって現実が虚構(推測)を追い越して無化される様など情報第一主義に踊らされる我々に問題を突きつけています。マイアはチャーミングですね。2018/11/25
みっちゃんondrums
22
イタリアの現代史を知っていたら、もっと楽しめたろう。過去の新聞の片隅の記事をほじくって繋げると、驚くような事実が現れる?新聞やテレビはヤバい事実から民衆の目を逸らすために、他の下らないニュースで紙面・画面を埋めている?この物語のどの部分が事実なんだろう。ムッソリーニの話は興味深い。死んだと思われた人が生きていたという話は、世界中の人が好きなんだな。本筋の展開も面白かった。そうか、その人はベルルスコーニなのか。イタリアも大変な国だね。2022/11/17