出版社内容情報
それは一枚の写真からはじまった――物語の愉しみ、思索の緻密さの絡み合い。20世紀全体を、陰謀と謎を描いた驚異のデビュー作。
リチャード・パワーズ[パワーズ,R]
著・文・その他
柴田 元幸[シバタ モトユキ]
翻訳
内容説明
それは1914年のうららかな春、プロイセンで撮られた一枚の写真から時空を超えてはじまった―物語の愉しみ、思索の緻密さの絡み合い。20世紀全体を、アメリカ、戦争と死、陰謀と謎を描ききった、現代アメリカ文学における最重要作家、パワーズの驚異のデビュー作。
著者等紹介
パワーズ,リチャード[パワーズ,リチャード] [Powers,Richard]
1957年アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。『舞踏会へ向かう三人の農夫』でデビュー後、着実なペースで読みごたえのある作品を発表している。邦訳された作品に『エコー・メイカー』(全米図書賞受賞)などがある
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年東京都生まれ。アメリカ文学研究者、翻訳家。著書に『アメリカン・ナルシス』(サントリー学芸賞受賞)、『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)など多数。訳書にピンチョン『メイスン&ディクスン』(上下、日本翻訳文化賞受賞)など多数。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えりか
51
みすず書房から出ていた単行本が河出で文庫になった。嬉しい。表紙は1914年に撮られた写真である。この写真に写っている三人の青年は否応なしに戦争に巻き込まれていく。話は、彼ら三人、写真に魅せられた私、赤毛の女を追う記者のピーター・メイズと三パートに分かれ、それぞれの視点によって語られる。複雑に入り組んだ人物たちと、ユーモア、そして多量な蘊蓄が読み手を楽しませてくれる。過去から現代へ、または現代から過去へと遡ることで、戦争が時代や個人に与えた影響が浮き彫りとなっていくようだ。メイズパートが面白い。下巻へ。2018/07/09
かわうそ
31
読むのにめちゃくちゃ時間かかってます。三つのパートに分かれて少しずつ全体の絵柄が完成しつつある…と思っていいのかな?2018/08/17
かふ
26
写真から物語を語るというのは、その前に読んだサイード『パレスチナとは何か』もあったので興味を引かれた。シモン『三枚つづきの絵』もそうだという指摘があり、ポストモダンの小説なのかと思った。最初にフォードの息子がデトロイトに建てた美術館の壁画の解釈があり、リベラのフォード自動車産業のアメリカは、逆「オリエンタリズム」なのかと思った。そして時代はネット時代の80年代であり、オーウェル『1984』の見方がある。フォードの産業進化論がオーウェル『1984』的世界なのだ。戦争(破壊)という概念から読むアメリカ。2024/07/09
おおた
20
中盤までは全員にピントがあっているようで、それぞれに区別をつける意義を感じられないくらい眩しい。一人退場したあたりから世界が動き出すように思う。ディエゴ・リベラ、アウグスト・ザンダー、サラ・ベルナールら歴史上の芸術家がフィクションの登場人物に絡むことで世界観に説得力をもたせ、それ以上に芸術家たちによって世界が動くきっかけが作られる。ただ、登場人物たちが揃いも揃って躁的で疲れる……。上巻時点では3つの舞台が収束する気配が微塵もないのだけどどうなるのかな?2018/07/28
tokko
20
様々な登場人物が出てきて宙に舞った物語がだんだんと形作られていく。ザンダーの写真とその被写体となった三人の青年、女を探すメイズ、複雑な挿話が幾重にも重なって繋がっているようで繋がり切らない、そのもどかしさが面白い。この後それぞれのパートはどこへ向かうのか気になります。2018/07/23