出版社内容情報
最も過激な中国作家が10のキーワードで読み解く体験的中国論。毛沢東、文化大革命、天安門事件から、魯迅、格差、コピー品まで。
内容説明
最も過激な中国作家が、10のキーワードで読み解く体験的中国論。毛沢東、文化大革命、天安門事件から、魯迅、格差、コピー品など。わずか40年で経済大国へと発展した社会の真実と矛盾をとらえたユーモア溢れるエッセイ集。『兄弟』で知られるベストセラー作家による、中国国内では発禁処分の問題作。
目次
人民
領袖
読書
創作
魯迅
格差
革命
草の根
山寨
忽悠
著者等紹介
余華[ヨカ]
1960年杭州生まれ。現代中国を代表する作家。幼少期に文革を体験する。88年から魯迅文学院などの創作班に学び、北京で天安門事件に遭遇
飯塚容[イイズカユトリ]
1954年生まれ。中国文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
15
10のキーワードをもとにして、文革時代から現代に至る中国の精神性を明らかにしていく。とりあげられた言葉は、①「人民」「革命」など中国共産党の歴史を語るにおいて最重要のテーゼ=国家の血肉と化した言葉、②「山寨」「忽悠」など現代中国の狂乱を表現する新たな言葉、③「読書」「魯迅」など、作家・余華の生活と活動に関する言葉、の3つに大別できる。私としてはやはり③の言葉についておもしろく読んだ。卓見だなとおもうのは、文革時代と現代とを比較して、社会構造自体は大きく変わったが、精神構造はたいして変わっていないよ、という2017/10/01
Tomoko.H
14
読んだことのない作家なんだけど、いきなりエッセイを読んでみた。著者の視点から近現代中国を考察している。この中では、最後の二語_『山寨(シャンチャイ)』…コピー・模倣品、不正規など『忽悠(フーヨウ)』…ペテン、法螺、デタラメなど_これがThe中国でしょ。みんな何を信じて生きているんだろう。面白いし割と好きだけど、付き合ったり仕事したりするにははかなり難しい相手だ、というのが率直な感想。2018/09/28
niisun
12
作者の生きてきた中国を10のキーワードで語る随筆。前半は作者の少年時代に当たる文化大革命期、後半は作者が作家となった改革開放期。個人的には文革期の話より改革開放過程における“格差”や“草の根”、“シャンチャイ”や“フーヨウ”の項が面白かった。「模倣」から派生して「偽造」「不正規」「悪ふざけ」と意味を拡大した“シャンチャイ”。「絶えず揺れ動く様」から派生して「誘導」「でっち上げ」「機に乗じる」と意味を拡大した“フーヨウ”という言葉が持て囃されているという話に、現代中国の実像を捉えるヒントがありそうですね。2018/03/15
刳森伸一
8
『兄弟』で有名な余華の中国に関するエッセイ集。文化革命時代の貧しい中国と現代の繁栄した中国とが同一の国であることもよく分かるが、それよりも教科書や歴史書には載らない個々のエピソードが抜群に面白い。作者の文学的な自叙伝という側面もあり、その観点からは「魯迅」の章が特にいい。2017/11/04
ぷるいち
7
タイトルだけだと低俗な暴露本に見えるが、現代中国を代表する小説家である作者のエッセイ。さほど過激には見えないが、文化大革命や毛沢東を取り扱っているからか、中国では発禁。10のテーマごとに、文革時代から現代に続く中国の大きな変化(「人民」という語の用法がどう変わったか、など)を、少々の統計的事実を入れて書いている。ある程度年齢のいった作者のオスタルギー(共産主義への懐古)と言ってしまえばそれまでだが、彼らのなかでの毛沢東の存在の大きさと、開発独裁的に進められた経済成長との軋轢はやはり中国ならではだと思う。2018/07/30