出版社内容情報
ヒトラーが突如、現代に甦った! 抱腹絶倒、危険な笑いで賛否両論になった問題作。本国で240万人動員の映画がついに日本公開!
【著者紹介】
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内容説明
テレビで演説をぶった芸人ヒトラーは新聞の攻撃にあうが民衆の人気は増すばかり。極右政党本部へ突撃取材を行なった彼は、徐々に現代ドイツの問題に目覚め、ついに政治家を志していくことに…。静かな恐怖を伴ったこの爆笑小説は、ドイツで大反響を巻き起こした。本国で二五〇万部を売り上げ、映画で二四〇万人動員したベストセラー小説の待望の文庫化。
著者等紹介
ヴェルメシュ,ティムール[ヴェルメシュ,ティムール] [Vermes,Timur]
1967年、ドイツのニュルンベルクに生まれる。エルランゲン大学で歴史と政治を学ぶ。ジャーナリストとしてタブロイド紙の“アーベントツァイトゥング”紙、“ケルナーエクスプレス”紙のほか、“シェイプ”誌など複数の雑誌でも活躍
森内薫[モリウチカオル]
翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科卒。2002年から6年間ドイツ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
378
下巻で、さらに展開を見せるのかと思っていたが、さほど大きな変化を迎えることもなく、むしろ全体としては地味に収束していったという感じである。着想の奇抜さに比して、小説そのものはよく言えばオーソドックスだが、見方によれば羊頭狗肉の感も免れない。現代ドイツの文明批評としても、これまた常識の範囲を突き破ることはない。ヒトラー自身もまた現代に飲み込まれていくかのごとくである。ドイツにおいては、今もなおヒトラーはタブーであり、したがって本書もセンセーショナルであったかも知れないが、それは国を越えていく普遍性を⇒ 2024/03/13
🅼🆈½ ユニス™
132
ドイツで発刊した際、論難の対象になったと言う。読めば理解するだろうけど、ヒトラーの魂を借りて今の状況を皮肉っているからだ。尚、妙に惹かれる部分も無くはない。ヒトラーに間違った話など無いようにも思えるほど、彼の蛇舌に欺かれてしまう。いくらヒトラーやゲッベルスに真正性があったとしても影で行われた蛮行が正当化されては困る。何百万人への虐殺やそれ以上の命を戦争に追い込んだ罪は永遠に赦されるべきではない。クックッと笑う中、笑う自分にふと恐怖を感じるドキツい風刺度の濃い一冊だった。この小説、本当に大丈夫なの⁉️2019/02/25
青蓮
120
テレビ出演したことで爆発的な人気を得たヒトラー。新聞社からの攻撃もものともせず、極右政党本部へ突撃取材もこなし、現代ドイツの問題にも徐々に目覚めていった彼はついには政治の世界へと足を踏み込んで行く。本書を読むと何だかヒトラーとても魅力ある人物に思えてくる。どうやら著者もそこを狙って書いたらしい。きっと実際の彼も人を惹き付ける何かを持っていた人物だったのだろう。ヒトラーは理想を追い求めるあまり狂気へ近づいてしまったのだと思う。面白く読める作品だけれど、ヒトラーとは何者だったのかを考える1冊に。映画も見たい。2016/05/14
absinthe
108
世間は彼をコメディアンの悪ふざけと認識している。ユーチューブで暴れまわるヒトラーに世間の風当たりが強いのだが。下巻では政党の党首たちとの対話が…。党名が実在なのが面白い。(この手の作品は架空の党名に変更するのが普通)ネオナチとの折り合いが悪い反面緑の党と意気投合するあたりが笑える。ヨーロッパ侵略でも始めるのかと思ったが進行は予想よりおとなしい。笑っていいのか悪いのか。悩みながら読む作品。ネオナチ野郎に殴られるシーンは笑いを誘う。2025/02/28
sayan
97
本書を「夜と霧」、「根源悪の系譜」とタイミング的に併読。読後、面白かった、そんな感想が出てきた自分自身に当惑した。著者は、主人公を悪者としてではなく人間的な、魅力ある人物として描いた。確かに、主人公と秘書のやり取りを切り取って眺めてみると、ちょっと変わった企業経営者と秘書のドタバタ劇に見えなくもない。しかし、著者の試みは「あの恐ろしい出来事が発生した真の理由を理解するために、本書と言う補助線を提供する」ことだったはず。主張は変わらないのにいまの社会や人々の心の隙間に入り込み定着するさまをまざまざと見せる。2019/11/11