内容説明
ナチスのユダヤ人虐殺を筆頭に、組織に属する人はその組織の命令とあらば、通常は考えられない残酷なことをやってしまう。権威に服従する際の人間の心理を科学的に検証するために、前代未聞の実験が行われた。通称、アイヒマン実験―本書は世界を震撼させたその衝撃の実験報告である。心理学史上に輝く名著、新訳決定版。
目次
服従のジレンマ
検討方法
予想される行動
被害者との近接性
権威に直面した個人
さらなる変種やコントロール
役割の入れ替え
集団効果
なぜ服従するのかの分析
服従のプロセス―分析を実験に適用する
緊張と非服従
別の理論―攻撃性がカギなのだろうか?
手法上の問題
エピローグ
著者等紹介
ミルグラム,スタンレー[ミルグラム,スタンレー][Milgram,Stanley]
1933年、ニューヨーク生まれ。社会心理学者。ハーバード大学で社会心理学博士号を取得の後、エール大学、ハーバード大学、ニューヨーク私立大学大学院で教鞭を執る。服従実験の業績でアメリカ科学振興協会より社会心理学賞を受賞。実験成果をまとめた『服従の心理』は世界的な反響を呼んだ。84年没
山形浩生[ヤマガタヒロオ]
1964年、東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学科およびマサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了。大手シンクタンクに勤務の一方、幅広い分野で執筆、翻訳を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
『よ♪』@勉強中…しばらくお休み
44
ミルグラム実験──俗称アイヒマン実験。生まれつきのサイコパスなんていない。権威者から命令されると残虐な行為を容易く実行してしまうという。この状態を"エージェント状態"と呼ぶ。責任を権威者に転嫁し、結果『服従』する。実験では大多数がこれに当てはまる結果だった。時に人は、命令に従わない『非服従』という選択もする。しかし、これは私たちが期待するような道徳心からではない。見るに堪えないというストレスからの逃避が理由であり、つまりは"自分の為"だ。生まれつきのサイコパスなんていなかった。──が、結局は残念な結果だ。2022/03/19
里愛乍
43
社会心理学者の服従実験記録であり、当初はかなりの反響があったという。個人では躊躇あるいは拒否する意識を持っていたとしても、権威からの命令には従ってしまうという結果は、驚きもあるがわからなくもない。個人の責任が伴うかどうかそこで人の心理は左右される。『人殺しの心理学』を思い出した。実験による分析記録は興味深く、もう少し時間をかけて読みたいところ。さらに補遺にある批判者の意見に対する記載も面白い。世間的倫理とは一体、と考えたくなる。2020/02/03
藤月はな(灯れ松明の火)
43
社会心理学の授業でミルグラムの服従実験や監獄実験の様子を映像で見たことがある。アイヒマンの例を挙げても人間は権力によって左右された状況によって自分の行動を決めることが多い。人は他者の痛みや苦しみを自分のものとし、想像できる。だからこそ、自分が嫌がることを他者にもできない。しかし、もし、「あの人は悪い人だからどんな残虐なことをしてもいい」、「あの人のせいだから仕方ない」という題目を自ら、与えるなら?その時に人は、他者を身近に感じて想像するということを停止して従ってしまうことが多い。故に人の善意はとても、弱い2015/01/21
ノコギリマン
33
社会心理学者スタンレー・ミルグラムによって行われた服従実験(俗称、アイヒマンテスト)についての本。あんまりにも有名なのでうっすらと実験内容については知っていたけれど、ちゃんと読むとかなり面白いですね。スタンフォード監獄実験しかり、厨二病御用達な感じはしますが、とても面白かったです。オススメ。2015/04/01
そふぃあ
29
有名なアイヒマン実験のレポート。権威に服従し、ボタンを押した人を肯定はできないけど、人間という生物の習性上、私たちもボタンを押す側になる可能性は大いにあることを忘れちゃいけないと思う。実際、現代社会でも同じことが起こっている。オフィスにいて現場を知らない偉い人が下した決定に、理不尽だとしても私たちは逆らえない。ナチスは人間の習性を悪用した歴史上最悪な出来事の一つだし、今の社会も、 大きな共同体を維持するための習性の利用法としてはナチスと似てると思う。誰もが幸せに生きるのに、今の社会システムは不適合。2018/08/22