内容説明
冴えない田舎医師ボヴァリーと結婚した美しき女性エンマは、小説のような恋に憧れ、平凡な暮らしから逃れるために不倫を重ねる。甘美な欲望の充足と幻滅、木曜日ごとの出会い。本気の遊びはやがて莫大な借金となってエンマを苦しめていく。テンポの良い名訳で贈る不朽の傑作。
著者等紹介
フローベール,ギュスターヴ[フローベール,ギュスターヴ][Flaubert,Gustave]
1821年ルーアン生まれ。19世紀を代表するフランスの小説家。1880年没
山田〓[ヤマダジャク]
1920年東京生まれ。母は森茉莉。祖父は森鴎外。東京大学名誉教授。1993年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はたっぴ
72
600頁近い大作をようやく読了。情景描写、心理描写ともに丹念に描かれていて、よくここまで練り上げたものだと感嘆してしまった。人妻の恋愛がテーマなのだが、結婚して夢破れたエンマの情念を時に重苦しく感じながらフランスの恋愛文化を満喫。ただ最後まで登場人物の誰にも感情移入(同情)出来ず、エンマ夫人の身勝手さに唖然とし、夫・シャルルの死と一人娘の行く末が憐れで仕方なかった。歴史は繰り返されると言うが、このような家庭崩壊は現代の日本でもあり得る話なのだろう。人間の性と業について考えさせられた作品。【G1000図書】2016/01/11
harass
55
恋に恋する女性の破滅を描く古典。この翻訳のは初めて読む。巻末の蓮實重彦の解説とナボコフの文学講義を参考にして読みだすがやっぱり傑作だと確信する。普通の小説であればヒロインを美化するものだが突き放したシニカルな視点は、とにかく出てくるキャラがことごとく俗物になってしまう。当然悲劇のヒロインも俗物と見ていて、この意地の悪さに苦笑いしてしまう。全方位的な冷酷で精密な描写が容赦なく救いがなく、小説とは細部であると断じるナボコフ先生がにんまりとする文体を十二分に楽しめた。2014/05/21
けぴ
45
フランスの田舎町を舞台に医者の妻であるボヴァリー夫人が、レオン、ロドルフの2人を相手に借金をしながら逢瀬を重ねるというストーリー。現代でもあるオーソドックスな話ながら名訳のため(森鴎外のお孫さん)とても読みやすい。登場人物も限られており、人物把握もしやすい。たまには古典を読むのも良い経験でした。2024/08/01
かんやん
44
小説の真実は細部に宿る(たとえ、矛盾があっても)、と紋切り型な感想を呟きたくもなる。現代の作家は、残念なことにもはや描写を信じていないように見えてしまう。しかし、密な描写こそが抵抗を生み、反復と対照が読者を陶然とさせるのでは。小説という日ごと生産され続けている商品は、誰もが読める(場合によっては書ける)ものだという錯覚の共有を前提とする。この「古典的傑作」はそんな錯覚を暴き、読者を覚醒させるだろう。ためになるものなど何もなく、楽しみも、豊かさもない。ただ刹那のような恍惚と長く続く不毛が残される。2020/01/03
fseigojp
34
鄙にはまれな美人妻が、だんだん贅沢を覚え、都会的洗練を身に着けた男に走り自滅する一生 同著者の感情教育は都会の女性たちの恋愛模様 うーんオシャッレー! 妻の旦那である田舎医者とか、友人の薬剤師の描き方がコミカルなのも面白い2015/11/12