内容説明
中世騎士道の時代、シャルルマーニュ麾下のフランス軍勇将のなかに、かなり風変わりな騎士がいた。その真っ白い甲冑のなかは、空洞、誰も入っていない空っぽ…。『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』とともに、空想的な“歴史”三部作の一作品である奇想天外な小説。現代への寓意的な批判を込めながら、破天荒な想像力と冒険的な筋立てが愉しい傑作。
著者等紹介
カルヴィーノ,イタロ[カルヴィーノ,イタロ][Calvino,Italo]
1923‐85年。イタリアの作家。第二次大戦末期のレジスタンス体験を経て、『くもの巣の小道』でパヴェーゼに認められる。『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』『不在の騎士』で寓話的・ピカレスク世界を描き、SF風の『レ・コスミコミケ』『柔かい月』など、現代文学の最前線に立つ作品を残す
米川良夫[ヨネカワリョウフ]
1931年生まれ。早大文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
25
鎧の下はからっぽの、意志だけで存在する不在の騎士アジルールフォの冒険のなんと奇想天外で素敵なこと。存在しているのに自分の存在を理解しないグルドゥルーを従者にし、海の底を歩いたり、彼の実直な騎士ぶりさえもどこか滑稽です。その物語を紡ぐ修道尼テオドーラの語り口もとても魅力的。しかしアジルールフォたちの冒険や、アジルールフォの鎧をまといブラダマンテを手に入れるためにアジルールフォのふりをするランバルド、名前を変えるブラダマンテなどを眺めつつ、存在とは、自分は存在しているといえるのかと奇妙な不安も感じたのでした。2016/08/18
そふぃあ
19
理想の騎士を体現するのは、文字通り「不在」である空虚な存在。永久に恋した女性を求めて彷徨う宿命にあるかと思われたランバルドも、最後はメタを突き破った大団円の未来に進むことができそうで良かった。摩訶不思議なものを受け入れる余地がなくなり、美徳が失われた現代には、「不在の騎士」が現れることはないだろう。なぜなら私たちこそが空虚な存在になり得るからだ。2019/11/18
秋良
15
不在の騎士。鎧の中は空っぽで、何かの意思によって動く理想の騎士。シャルルマーニュ帝の下で戦争に参加するものの、戦闘はグダグダで、周りの騎士も欠点だらけ、従者もポンコツと騎士道物語を皮肉るような展開。このちょっとシュールな皮肉っぽさはイタリアって感じがする。その後も王道をパロディにしたようなストーリーが続き、ばかばかしさの裏に理想と現実の乖離や空ろな社会構造への批評が隠れてる気が……しなくもない。アジルールフォの鎧を着たランバルドがキレられて「でもさあ……良かったじゃない?」と何故か自信あるのに笑った。2026/01/10
taku
15
初カルヴィーノ、面白かった。幾つもの寓意が仕掛けられた、コミカルな騎士道物語。存在論を突きつけてくるようで、色々な事柄を揶揄していて、それは物語そのものに対してでもあるような遊戯感覚。英雄や伝説は創造によって存在し、現実はこんなもんよとでも言うように。人は経験を誇張し、記憶を都合よく変えてしまう。正確な記録はときに不都合だと言うように。道中を楽しめる冒険ものであり、それぞれの納め方、オチのつけ方もいい。枠から出てきた人物がどのように語っていたとしても、物語はここに存在している。2019/08/21
501
14
初のイタロカルヴィーノ。生身の人間として存在していない(鎧の中が空っぽ)、意識のみが存在している騎士が、自分の存在を意識できない、生身の人間として存在している従者と、自分の存在意義を確認するための旅する。幻想とリアルの交わり具合が絶妙で不思議な浮遊感がある。小難しいことを考えずに物語を楽しみながら、読後には人間の存在とは何か哲学的な思索を自然と考えてしまう面白い物語だった。2019/10/08




