内容説明
神々とは“運命”と“偶然”の賽ころ勝負の勝者のためマーナ=ユード=スーシャーイが造った戯れであり、世界はマーナの目覚めとともに消える幻に過ぎない。美しくも残酷な異境の神話を描いた極北のファンタジー。続篇『時と神々』完訳をおさめた初の完全版。他に『三半球物語』等を収めた、ダンセイニ幻想短篇集成第三弾。
著者等紹介
ダンセイニ,ロード[ダンセイニ,ロード][Dunsany,Lord]
1878‐1957年。本名エドワード・J.M.D.プランケット。アイルランドの男爵。第18代ダンセイニ城城主。戯曲家としてケルト復興運動に参加。処女作『ペガーナの神々』を初めとし魅力的なファンタジー作品により、H・P・ラヴクラフト、A・C・クラーク、稲垣足穂など、ジャンルを超えて多くの作家に影響を与える
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本木英朗
20
昨年2冊刊行された、ダンセイニ幻想短編集集成の第3巻。本書には「神々とは<運命>と<偶然>のさいころ勝負のためマーナ=ユード=スーシャーイが創った戯れであり、世界はマーナの目覚めとともに消える幻に過ぎない」とする、ぺガーナ神話の世界を描いた「ぺガーナの神々」と、その続編「時と神々」に、「三半球物語」と単行本未収録作品11編をまとめて4部構成とした短編集である。とにかく「ぺガーナ神話」の、壮大で、美しく、残酷な世界が心行くまで堪能できる、極上の短編集であった。
本木英朗
15
アイルランド(当時は英国領だが)の幻想小説家のひとりである、ロード・ダンセイニの短編集のひとつである。俺は2004年に1回読んでおり、今回で2回目である。「ペガーナの神々」に始まって、「夜の森で」で終わる短編集であるが、今回も超よかったです、ハイ。特に〈ペガーナの神々〉と〈時と神々〉の2編集は、どれもこれも大満足でした。さすがは作者であり舞う。(→)2024/01/14
白義
6
我々の住むこの世界もまた、幾度となく繰り返される生成と消滅の律動の中の、一瞬の出来事に過ぎず、全てはマーナ=ユード=スーシャーイが目覚めるまでの夢幻に過ぎない。そのスケールの壮大さの前に震えが走る宇宙神話であり、近代ファンタジーの一つの頂点とも言える極限の世界観だ。この宇宙自体をも相対化する冷たい恐ろしさは、ラヴクラフトに受け継がれ、コズミックホラーというとてつもないジャンルを以後産み出した。現在世に伝わるペガーナ神話の全貌が一冊で把握できる驚異の書。ダンセイニの短編集でも最高水準だろう2012/10/10
tanukichi ponpoko
2
完訳『ペガーナの神々』と短編集を再編し刊行された荒俣訳版文庫では収録されなかった『時と神々』のエピソードを完全網羅した決定版。グーテンベルクで英和辞書片手に王の旅と問答した者には垂涎の一冊だった。贅沢を言えばTHE ENDの仕掛けを残して欲しかったが、今さら無理を言っても仕方ない。苦心しつつ原著を読了したファンを想った中野氏がベールの裏に隠した秘密だったのだと勝手な妄想に耽るとしよう。惜しむらくは一章の訳がまずく古文調への甘えと読み手への無配慮が目立つ。荒俣訳を読めばいいけどさ、と嘯いた自分が少し悲しい。2016/05/22
プロムナード
2
壮大にして崇高なペガーナ神話。荒俣訳の内容はほとんど忘れてるけど、あちらは神話、こちらはファンタジイという印象。うっとりするほどの陶酔感に満ちていて、研ぎ澄まされた「ペガーナの神々」も象徴性が芳醇に香る「時と神々」も味わい深い。この処女作のあとに作家中後期の現実を舞台にした短編群が併録されてるのは違和感があったけど、続けて読むとこの収録順が沁みる。幻想世界に生きた作家が年を重ね、もうそこへ至れなくなったときに感じる郷愁……。間に挟まれた「ヤン川」三編がまさにそのテーマだし、これは編者の見事な手並みですね。2016/01/28