内容説明
変幻自在な語り部Qfwfq氏。あるときは地球の起源の目撃者となり、あるときは生物の進化過程の生殖細胞となって、宇宙史と生命史の途方もなく奇想天外な物語を繰り広げる。現代イタリア文学界を代表する作家が、伝統的な小説技法を打ち破り、自由奔放に想像の翼をはばたかせて描いた連作短編集。幻想と科学的認識とが、高密度で結晶した傑作。
著者等紹介
カルヴィーノ,イタロ[カルヴィーノ,イタロ][Calvino,Italo]
1923‐85年。イタリアの作家。第二次世界大戦末期のレジスタンス体験を経て、『くもの巣の小道』でパヴェーゼに認められる。『まっぷたつの子爵』『木のぼり男爵』『不在の騎士』で寓話的・ピカレスク世界を描き、SF風の『レ・コスミコミケ』『柔かい月』など、世界の現代文学の最前線に立つ作品を残す
脇功[ワキイサオ]
1936年生まれ。京都大学大学院博士課程修了。プール学院大学教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
104
☆6.0(5点満点ですが) 難解ではあるが、どの作家にもない変幻自在で自由奔放何処にもないかなりな傑作短篇集。 以前読んだ『月の文学館』の中で川上弘美がこの『柔らかい月』を取り上げていて興味を惹かれ手に取ってみた。 奇想天外な「時」と「空間」と「生命」に関する科学的哲学ですね、これは。「時」は「空間」という鉄棒に掴まりぶら下がり懸垂と廻転を繰り返し、上下し、時に逆回転や不規則運動をもこなし、躍動し、果ては崩壊し、その狭間に「生命」は揺蕩っている。2021/03/11
zirou1984
40
まさかのQfwfqは語るパート2。しかし前作『レ・コスミコスケ』とは違い彼の名前が登場するのは第二部の頭まで。細胞分裂を愛の歴史として語るこの章も興味深いが、やはり本懐は原題にもなっている第三部「ティ・ゼロ」だろう。ここではどの話もある瞬間を捕え、その一点において語り得るもの全てを語りきろうとする偏執病的な語りが展開されていき、それはデュマの名作を換骨奪胎した最後に書かれ得るものそのものへの語りへと到達する。読み進める程に深く、より複雑な迷路に分け入ってる様な感覚がたまらない。でもそれは確かに前進なのだ。2014/04/12
燃えつきた棒
39
NHKのラジオ第2で、毎週木曜日の午後8時30分から13回にわたって、東京外語大の和田忠彦先生の「カルチャーラジオ文学の世界〜作家と旅するイタリアの街」を放送している。 (ちなみに、過去の放送の聴き逃し配信は、NHKラジオアプリ「らじるらじる」で、放送後8週間聴くことができる。) 折角のご縁なので、和田先生が前半の放送で触れていたカルヴィーノの作品を読んでみようと思い手に取った。/2022/06/13
そふぃあ
24
実験的で難解。 あらすじからSFかと思ったがどうやら違うようで、ジャンル分けが意味をなさない不思議な小説。 月がボトボトと落ちてくる光景などはとても美しく幻想的で、しかし恐ろしい。これがカルヴィーノの追求した「軽やかさ」なのかな。いつか、遠いのか近いのか分からない未来、地球内部で結晶の生まれるさまを観察する私たちや、存在し得たかもしれない生物たちをシミュレーションで生み出したりする私たちがいるかもしれない。そうやってカルヴィーノの想像力の翼に乗るのは楽しい。2020/12/08
かまる
21
可能性の究極を追求したような短編集。第一部では超越した存在の者が、異なる世界を目撃する。第二部からは一気に様相は変わり、結晶や細胞、鉱物の世界であったり、三部では空間や時間を濃密に表現していた。もう付いていくのが大変。取り巻く"状況"を強く描いており、ここまで想像力を膨らませて読ませる文章は初めてかもしれない。何か凄い。しかし、やはり表題作「柔らかい月」は印象的で、月が地球の引力により変形し地上に蝋のように滴る様なんて脳裏に焼き付く。難解だが、この一貫性のない科学と幻想を描く文章には妙に惹かれた。★3.52026/03/05




