内容説明
サン・マルタン運河から男のバラバラ死体があがった。例によって首だけは見つからないので身許は確認できないが、鑑識の結果、年齢は五十すぎ、長時間立ったまま過ごす職業で、湿った地下室に出入りし、ぶどう酒を扱う者と推定された。メグレは、その日たまたま立ち寄った居酒屋のことを思い出していた。そしてその店の、痩せた褐色の髪の女主人の姿を…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
16
パリ中央部、警視庁に近い運河の河岸で、伝馬船が切断された死体の一部を引掛ける。結局頭部だけ見つからず、捜査は難航する。捜査の過程で近くの居酒屋の亭主の失踪が判明。特異な性格を示す亭主の妻、その愛人達が捜査線上に浮かび、読者もメグレも事件の成立ちを想像する事となる。本作ではメグレの天敵コメリオ予審判事が登場。融通の効かぬ硬直した階級観の持ち主に事件解決の花を持たせる結末になるのだが、本裁判では温情の判決のある事を期待して良いのだろう。仏国の夫婦財産の仕組みの一端が理解されたが、さて代襲相続もあるのだろうか。2023/08/27
有沢翔治@文芸同人誌配布中
3
サン・マルタン運河を航行中の舟が人間の腕を引っかける。すぐに警察が駆けつけ、捜索が行なわれたが首から上だけは見つからない。鑑識の結果、身元は解らないものの、年齢は五十代、長時間の立ち仕事についていて、湿った場所に出入りし、ワインをあつかう者だと推定された。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51039005.html2010/04/25
冬峰
3
冒頭に二人の兄弟が出てきて、しかも彼らは双子の姉妹と結婚している、という記述が出てきた。なのでてっきり4人のうち誰かが殺されてもう一方は行方不明になって被害者がどっちなのかわからないって話かと思った。全然違った。今回は居酒屋の若くもない女が興味の対象になるが、かなりわかりにくい人物。最終的には愛人も含めかなり理解できるようになるが…事件解決後、あの人はどうやって生きていくんだろうか。2024/03/20
Iwata Kentaro
3
本書を最初に読んだのはたぶん小学生の時。父がとっていたリーダーズダイジェストの付録がミステリー集だったのだ、記憶はぼんやりだが。たしかフレミングとかハメットとかチャンドラーとか渋めの作品が並んでいてそのひとつが本作だったと思う。当時、これをどう考えたかは覚えていないが、メグレものをその後集めて読まなかったのを考えるとあまり感動しなかったのだろう。シムノンの作品は疲れて寂しくてネガティブな中年オヤジが読む本だと思う。小学生が読むものではない。傑作です。ようやく僕もメグレを楽しめるくたびれたオヤジになったのだ2018/11/16
ありさと
0
ワイダニット。シムノンの書く、というかメグレの見る犯人の描かれかたはとても肌に馴染む。2013/02/20