内容説明
パリ近郊のトム・リプリーのもとにロンドンの画廊から連絡が入った。天才画家ダーワットの個展を前にして、贋物を掴まされたと蒐集家が騒いでいるのだという。それも当然のこと、トムと画廊の仲間でダーワットが数年前に死んだことを隠し、贋作を作り続けていたのだ。トムは画家に変装して記者会見で健在ぶりを示すが、そこに当の蒐集家が現われ…。名作『太陽がいっぱい』に続くリプリー・シリーズ第二弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
41
古本市で入手。あの「太陽がいっぱい」の続編。「贋作」とはこの物語の主題であり、罪を犯した挙句に友の遺産や妻の財産に頼って貴族的な生活をしているトムの己に対する自嘲の声。著名な画家ダーワットの贋作をするバーナードはもう一人の主人公。ダーワットに劣らぬ才能があるのに誰からも認められない。トムだけが認めている。彼も又犯罪者であるが故に並外れた才能を正当に評価されないから(ちなみに「太陽が~」の原題はThe Talented Mr Ripley)。サスペンス作家としてしか評価されない事に不満だった著者の心の声か。2016/02/12
井戸端アンジェリか
19
リプリー読了から1年以上経ってやっとトムと再会できた。嬉しすぎてもったいなくて読みたくなかった。でも読んだけどね。 邦題タイトル「贋作」ブラボー!!!!!誰この題名考えたの、無言で近づいていきなり後ろからバンバン肩を叩きたい。 最初の最初から何もかもが贋作だよね。いつになったら上塗りをやめられるんだろうか。これからもハラハラしながら見届けます。2016/09/24
リプリー
4
前作で運良くディッキーの遺産をかすめ取ったリプリー。今作では結婚もして、豪邸に住み、家政婦もいるというリッチな生活をしています。そんな彼が、前作と同様にある時は衝動的にある時は打算的に殺人を犯し、警察の激しい追求を受けます。しかし、それでもリプリーは持ち前の頭の回転の速さと運の良さですり抜ける。ハイスミスの乾いた文体が緊張感をより一層高め、読んでいるこっちが憂鬱になり、まるで警察に追われてるんじゃないかと錯覚するくらい面白かった。2012/03/04
ニミッツクラス
2
リプリーの2作目。「危うい」感じはいささかも衰えていない・・いや、全開。リプリーの選択肢は多くはないし、当初はエロイーズや仲間にも秘密だったせいもあるが、やっぱりそうなるのかと。物語はタイトル通り。頭しぼって大団円の結末なんてほど遠く、ヤルときは自分一人というリプリーの哀しい孤独の生き様がハイスミス的結果オーライで描写されている。リプリーの変装は納得し難いなぁ。二人目の死体の処分もそんな方法でも良いのかと、お国柄に驚愕。エロイーズは「仲間」じゃないから、その微妙な夫婦関係も伝わってくる。★★★★☆☆2011/07/21
みき
1
あれから六年後 リプリーはやっぱりヤバい橋を渡っていた。相変わらずの行き当たりばったりの犯行と言い訳。でも今回は殺されかけたりする。奥さんと仲がいいのは何よりです。2015/06/07