河出文庫<br> 夏の夜の10時半

河出文庫
夏の夜の10時半

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  • サイズ 文庫判/ページ数 203p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784309461151
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

スペインへの旅の途上、運命の夏の一夜、人妻マリアは、夫ピエールとその若く謎めいた恋人クレールへの嫉妬に身もだえながら、幼い妻をその手にかけた殺人犯ロドリゴ・パエストラと悲劇的な邂逅を遂げる…。デュラスが、血と悦楽の国スペインを舞台に、それぞれ狂気を秘めた四人の男女の愛のかたちを流麗な筆致で描き切ったフランス文学の秀作、待望の文庫化。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

351
Annui(アンニュイ)感が全編に横溢する小説である。物語の舞台はスペインに設定されており、ロドリゴ・パエストラの行為はLa passion(パッション)によるものであろう。そのことは見方を変えれば、パッションもまたマリアのアンニュイに包含されてしまうのだと言えなくもない。美貌のクレールと夫のピエールの不毛の愛もまたしかりである。そうしたところは、まことにデュラスの小説なのだと思わせる。この感覚を受け入れられるかどうかが、すなわちデュラスを受容できるかどうかにかかっているのだろう。 2019/07/04

えりか

42
色彩、香り、雨音、ざわめき、熱、情景を肌で感じる。映像として浮かぶ。囁かれる妻とその愛人を殺した男の噂。マリアはその男に自身を重ねたのだろうか、同情したのだろうか、救おうとすることで、もしかしたら彼女自身が救われようしたのだろうか。スペインの喧騒の中で、彼女の焦燥と孤独が静かに悲鳴をあげている。それが心に響いてきて、悲しくなる。2018/05/06

那由多

9
スペイン旅行中の人妻が出会う、殺人事件。『愛人』『モデラート・カンタービレ』ほど印象に残らなかったが、マリアの唐突な熱情には物悲しさに似たものを感じて切なくなる。

twinsun

5
愛し合う倦怠期の二人に美しい友人が忍び込み、雨の日の偶然の殺人事件に触発されて行き場のない愛情が暴走し殺人者を自死に追いやる過程で感情が枯渇して愛が終わる。愛が滅びる過程を主人公は誰も恨むことなく受容し救われなかった殺人者の途方に暮れた愛に想いを馳せる懐古は物悲しい。2022/04/01

しゅん

5
夫婦と一人娘と夫の恋人の四人によるスペイン旅行。夫婦と恋人の関係性が不透明で靄に包まれている。そもそも何故この四人で旅することになったのか、説明の得られないままシーンは変わっていく。偶然出会う殺人犯が関係をより複雑にする。妻マリアが屋根の下に犯人の男を見つけてから車で麦畑に連れ出すまでの描写の静かな緊張感はたまらないが、マリアが彼を連れ出す理由も謎めいている。ただ、人と人の間のカオスを描くのにこの不可解さは必要なのかもしれない。愛と憎しみと穏やかさと狂気が、うだる暑さと激しい雨の間で混ざり合う。2016/06/01

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