河出文庫<br> 魔術師〈上〉

河出文庫
魔術師〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 472p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784309460864
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

イギリスの中産階級に生れ、オクスフォードを出た青年ニコラス・アーフェは、すでに人生にある種の虚しさを感じていた。ある女性とのエロティックな恋が終ったのをきっかけに、英語教師としてエーゲ海の孤島に渡る。そしてそこで不思議な老人コンヒスに出会う。次々と起きる、複雑怪奇な出来事…。サスペンスあふれる恋愛小説、冒険小説、そしてオカルティズム哲学の稀有な物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

105
『フランス軍中尉の女』で苦手意識を持った作家なので、あまり気が乗らないまま本を手に取ったが…、同じ作家とは思えないほど、すらすら読んでしまう。ウンチクが多くて閉口するも、それは読み流してもよさそうだと途中で気付く。登場する女性陣が、私にはよく理解できない屁理屈をこねないのもいい。イギリス人がギリシャに行って青い空や海に魅入られる…という話や、名門大に通う青年が両親の突然の事故死により突然職探しに走る…という話は、ありがちな設定なのだが、なんだかそんなことは気にならないほど、先々へと読んでしまう。2017/04/06

藤月はな(灯れ松明の火)

71
ヴィクトリア時代の名残を引き摺った時代に生まれた(作者の分身と思える)ニコラス・アーフェ。彼は植民地生まれのアリスンと恋に落ちて彼女とともにギリシャ行きを決めるが、その前に破局。単身ギリシャで教職に就いた彼はプロスペロー公や仙人を思わせるギリシャ人、コンヒスから「微笑みの秩序」やギリシャ神話史、占星術、美術論などの教えを請うようになる。しかし、リリーと出来てからアリソンを袖にするニコラスは屑である。一方でコンヒスがアルゼンチンにいたことはもしかして・・・と思いつつ、下巻へ。2017/05/17

harass

66
英国人の主人公は生活に行き詰まり、ギリシャの島の学校に英語教師として赴任した。その島で裕福で孤独な老人と知り合う。彼の話とまわりで起きる奇妙な出来事は金持ちの単なる暇つぶしなのか、それとも…… 主人公の主観視点のみで展開していくので、ひねくれた主人公の裏読みしすぎなのかそうでもないのかが読者には曖昧で『信頼できない話者』の典型だ。読者は落ち着かないままに上巻を読み終える。ブックガイドなどでよく聞く作品でようやく手に入れたが、なかなかに読ませる作品で感心。2016/12/22

NAO

65
恋人との腐れ縁を断ち切るためにギリシャの私立学校に赴任を決めたニコラス・アーフェ。前任者の謎めいた言葉、その言葉に導かれて行った先で出会った不思議な老人。主人公の視点で描かれているため出来事を客観的に見ることができないあやうさと、自分の前で繰り広げられる怪しげな現象を「仮面劇」と名づけてその妖しげな雰囲気に飲み込まれてしまわずにいようとするニコラスの不安定な心理が、独特の世界を作り上げている。ギリシャの暑い日差しの中、それは白昼夢のようだ。2019/02/19

きゃれら

11
20年以上ぶりの再読。敬愛する書評家に勧められて読み、感銘を受けたこと、ストーリーには幻惑されどおしで、終わっても何が何だかわからなかったことを記憶している。今回もとにかく幻惑され、読むスピードが最遅。ただ、自分が年齢を重ね古典を読み漁ったことで、物語に埋め込まれている様々な仕掛けがより意識できているんだろうと思う。オイディプスが父を殺した場所、って言われても、当時は「なんだそれ?」という無知な人間だったものなあ。さて、下巻へ。2022/03/30

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