内容説明
ロサンジェルスにやってきた、流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスに呼ばれ、賭博船の用心棒になってくれと頼まれる…。“不況と混乱の時代”、“ギャング・エイジ”と呼ばれる30年代のロサンジェルスで、政界とつながる組織の陰謀にまきこまれる主人公は、したたかにハードに、反撃にでる。チャンドラーが“超ハードボイルド”と評し、ビル・プロンジーニやジョー・ゴアズも“『裏切りの街』はまさにハードボイルドだ”と絶賛した極めつきの名作。ポール・ケイン唯一の長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
77
唐突だが蕎麦を食うとき、蕎麦本来の味を味わうために薬味もつゆも使わずにほんの少しの塩をつけて食べることがある。何ものにも邪魔されず鼻に抜ける香りと食感を楽しめる。しかしそれは一番おいしい食べ方ではない。本書を読んだ感想を例えるなら、極上の手打ちそばをほんの少しの塩で賞味することに似ている。まさにハードボイルドそのもの。余計なものを足さず混ぜず暴力的なシーンが淡々と描かれ、その場面はクリアなイメージとして読者の脳に像を結ぶ。しかしつゆと薬味があればもっとおいしかっただろうなぁというのが偽らざる感想だ。2022/01/13
太郎丸
5
1930年代の大不況時代のアメリカが舞台のハードボイルド小説。心理描写や修飾語を極限までそぎ落としており、強力なハードボイルド文体。ハードボイルドはキャラクターや設定というより、文体の技法・技量だと再認識(前者の力だけに頼ると浅くなりがち、という意味で)。作者は脚本家出身らしいが、テンポが早く視覚イメージも湧きやすいので読みやすかった。暴力場面の唐突さが初期のたけし映画を思わせる。昔の小説でも面白いものは面白い。2021/11/01
陽一
2
ハードボイルドの真髄。たった一作でもハメットに匹敵する。心に迫るほんの一粒の感傷がハードボイルドを完成させる
戸田健太朗
2
チャンドラーは超ハードボイルドと評価したそうだ。それだけあって主人公や登場人物の内面描写などは一切なし。この客観描写はカメラアイとも呼ばれているのか。徹底している。これ脚本じゃないの?と思うくらい。ストーリーにはそれほど興味をもてなかったけど。2012/11/09
kanamori
0
☆☆☆★2013/09/27