内容説明
「どんぐりのたわごと」―ローマ留学時代、たった一人で原稿執筆から製作まで手がけ、日本に送りつづけたミニコミ誌を全号収録。名作「こうちゃん」をはじめ、サバやジオノの翻訳など、須賀の創作の原点が収められている。「日記」―夫の突然の死から四年。孤独と向き合い、ミラノに別れを告げるまでの日々を克明につづった貴重な記録。
目次
どんぐりのたわごと
日記―1971年1月16日~7月22日
著者等紹介
須賀敦子[スガアツコ]
1929‐98年。兵庫県生まれ。聖心女子大学卒業。上智大学比較文化学部教授。1991年、『ミラノ 霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はっせー
66
もう須賀敦子全集の残りがこれを含めて3巻となってしまった。今回の7巻は「どんぐりのたわごと」というミニコミ誌と夫ペッピーニさんが亡くなってから4年後の日記が書かれている。なかなか内容は難しいところもあるが日記に関してはパーソナルな部分も知ることができるのでよかった!また続きを読もうと思う2023/12/17
aika
44
イタリアから日本の友人たちへ書き続けた『どんぐりのたわごと』を読むと、カトリックとして、一人の人間としてどう生きるべきか迷いながらも現実社会を直視し、とりわけ貧しき人々へ眼差しを注いできた信仰者としての須賀さんの素顔が見られます。特にトゥロルド神父の貧しい日々を生きた母を思う詩は、繊細で哀切を帯びていて美しく、涙が出ました。また帰国が決まってからの日記から、ペッピーノのいない心の隙間を埋めるような慌ただしい日々の悲痛さと、喪失の悲しみを湛えたまま一人で生きていくと決めた確固たる意志が感じられました。2022/01/16
kaoru
10
「どんぐりのたわごと」には時に優しく時に厳しい言葉が綴られている。夫ペッピーノを亡くした後の「日記」には寂しさや迷いのなかで少しでも進もうとする著者の意志が感じ取れる。それにしても日記のなかの須賀さんの感情の豊かなこと。一人で思索するのみならず、日伊を問わず多くの人びとと実に頻繁に家庭的な交流を持ちつつ(実際、人の世話にかなりの時間を割いている)自分の信仰や生き方を絶えず問い直している。エッセイなどとはまた違った生の須賀さんの声を知ることができ、とても有意義な読書となった。2017/12/21
コニコ@共楽
6
全集7巻目読了。私家版冊子の「どんぐりのたわごと」には、須賀敦子さんの精神の本質をみるような真摯なことばが綴られていました。この冊子がペッピーノと出会った充実期だとすると、後半の日記には、ペッピーノが亡くなってからの切なくも健気な須賀さんが見えてきます。コルシア書店の仲間たちが実名で出てくるのも読んでいて懐かしい気持ちになりました。2013/02/05
fishdeleuze
6
これほど素晴らしい日記を読んだことはない。須賀氏の真摯に生きる姿勢や苦悩などが淡々としかし切実に書かれている。日記ならではの文章なのだろう。この全集は既に発表されたものも含まれるが、それを凌駕してそろえておきたい全集。2008/12/03