内容説明
名作、菅原孝標女「更級日記」が江國香織訳で鮮やかに甦る。東国・上総で「源氏物語」に憧れて育った少女が父の帰京に伴い、京で念願の物語を入手する。宮仕えと結婚を経てやがて物詣でに励み、晩年は寂寥感の中、仏教に帰依してゆく。読み継がれる平安時代の傑作日記文学。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964年東京都生まれ。著書に『きらきらひかる』(柴式部文学賞)、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(山本周五郎賞)、『号泣する準備はできていた』(直木賞)、『がらくた』(島清恋愛文学賞)、『真昼なのに昏い部屋』(中央公論文芸賞)、『犬とハモニカ』(川端康成文学賞)、『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』(谷崎潤一郎賞)、近刊に『去年の雪』『シェニール織とか黄肉のメロンとか』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
126
『更級日記』名だけは…。古文の授業は居眠りしてたか?30数年前、千葉に移り住み、近くの市原市にその昔、上総国の国衙があり、そこが更級日記の出だしの地であることを知りました。父・上総介菅原孝標が国守の任を勤め上げ、13歳の次女(著者・孝標女)ら家族と共にあずま路を辿り帰京するところから物語は始まります。日記と称しているが彼女が50代になってから著された回想録。念願の文学三昧、結婚、宮廷勤め、出会い(仄かな恋?)、父や夫との死別と物語に憧れた少女が次第に信仰の世界に浸って行く、女の一生を僅かな紙数に凝縮。 2023/11/11
nobi
77
現代っ子的な訳は古文の陰影の深さ詠嘆の響き減じて、蝋燭の光で見ていた情景を蛍光灯の下で見るように感じていた。でもその内菅原孝標女の結構お茶目なところに気づかせてくれる。大変なはずなのにお気楽に見える長旅、明け方まで語り合う女房たちの様も目に浮かぶ。江國氏言うように “奇妙かつ十分に現代的”なのかも。それにしても何て多くの身近かな人の死に出会うことか。涙は途切れることがない。埋め合わせるかの如く六角堂の前世の仏の麝香の夢が訪れ、都度の歌は哀しさと想いとをあまりに美しい言葉に昇華して遥か高みへと昇り行くよう。2025/04/27
巨峰
52
貴族の家に生まれた女性≒作者の一生の振り返り。今でも裕福な家庭に産まれた女の子でこんな感じの人は結構多い気がしますー。そんなに変わってないかなという感想。2025/03/08
優希
51
平安時代の文学少女の日記が江國さんの現代語訳で読めるのが嬉しかったです。源氏物語に憧れ、宮仕え、結婚、そして仏教に帰依していく日々。日記を通じてその空気が伝わってくるようでした。平安時代の日記文学の傑作ですね。2024/04/30
pirokichi
27
2024年最後の一冊はコレを選んだ。『平安ガールフレンズ』(酒井順子)を読んで、物語と夢の話が大好きな、酒井さんが称したT(=菅原孝標女 1008年~)に、会いたくなったから。江國香織さん訳で読みやすく、何といっても「T」と思えばとても親近感が湧き、面白かった。千年も前に書かれたものを2024年に生きる私が読んでいる…ほんとあらためて不思議だなあ、ありがたいなあ。江國さんもあとがきに書いておられるが、私も姉妹の夜更かしの場面が好きだ。2024/12/31
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