内容説明
勝ち気な美少女・まゆみは、父を亡くし、愛らしい弟と病弱な母と東京に向かっていたが、道中で母も病死してしまう。偶然居合わせた辻男爵家の家庭教師・純子は、二人を見捨てられず引き取ることにする。男爵家にも家族同然の愛情を注がれるも、人から施しを受けることが気位の高さゆえ許せないまゆみは、弟を残し家出し―。数奇な運命に導かれて行き着く先は?
著者等紹介
吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896年新潟市生まれ。10代から20代にかけて発表した『花物語』が「女学生のバイブル」と呼ばれるほどの大ベストセラーとなる。流行作家として人気を博した。1952年「鬼火」で女流文学者賞、67年菊池寛賞受賞。73年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あんこ
10
全ての吉屋信子作品を知る訳では無いが、今まで読んだ彼女の作品の中で一番エネルギッシュだった。確かにこれは当時の少女達にとってのエンタメであり、どれほど夢中になったことだろうか。私も少女の行く末が気になって貪るようにして読んだ。とにかくキャラクターが最高に良い。語り手がヒロインとは別なので、ヒロインであるまゆみの行動にドキドキさせられる。そしてその運命につい感情移入してしまう。読者である私は級友の篤子の目を借りてまゆみを頁の外側から見守ることもできる。 そして柚木さんの解説も堪らなかった。最高に熱い。2024/08/13
山のトンネル
8
1930年?!に刊行の驚き。掘り出し物感満載。2023/12/04
めめ
3
ドラマチックで続きがどうなるのか気になって、一気に読める。上品な少女小説。ハッピーエンドで終わる安心感。両親が死んで孤児になった少女の波瀾万丈な物語。ちょっと頑なな心の少女が苦労して経験を積んでいく。華やかな学校生活、乗馬、意地悪なお手伝いさん、1930年らしい道具立てが興味深い。また吉屋信子の単行本が出るだろうか、楽しみです。2023/10/31
hana.
2
東京へ向かう列車の中で母親を亡くし、弟とふたりきりになってしまった少女まゆみ。運良く男爵家の屋敷へ迎えられるも、憐れみを受けることに我慢ならない性分故に弟を残し家出をしてしまう。家に残してきた荷物の中の珊瑚で彫った紅雀が、不思議な縁をつなぐ。ひとつひとつの感情を丁寧に描いているけれど、展開は早い。この時代の良さを感じつつ、今でも色褪せることのないストーリー。頑ななまでに気高く生きる姿に憧れを抱くけれど、近づくことはできない存在。なにより久しぶりにこの世界観に浸れたことが一番の喜び。2023/11/10
白いハエ
2
うねるような筋に最後まで引っ張られていった。建付としてはベーシックな少女小説の有りようながら、両親を失った姉弟のスリリングな身上や庇護や慈愛、嫉妬、教養に飾られた煌びやかな文体、そしてラストにおいて「紅雀」というモチーフが編み上げる運命のアラベスクと、およそ百年前の小説であるにも関わらず飽きることがない。既にしてオタク気質の人物が出ていることにも驚いてしまった。2023/10/12
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