内容説明
バッハ、モーツァルト、ショパン、ワーグナー、マーラー、フルトヴェングラー、カラヤン、C・クライバー、グールドをまとめた単行本『クラシックの核心』に、新たにベートーヴェン、トスカニーニ、バーンスタイン、カラス、リヒター、吉田秀和の六人を増補し文庫に。極私的な体験から、西洋クラシック音楽の核心に迫る。
目次
バッハ 精緻な平等という夢の担い手
モーツァルト 寄る辺なき不安からの疾走
ベートーヴェン 日本人の楽聖受容
ショパン メロドラマと“遠距離思慕”
ワーグナー フォルクからの世界統合
マーラー 童謡・音響・カオス
トスカニーニ 朽ちざる偶像
フルトヴェングラー ディオニュソスの加速と減速
カラヤン サウンドの覇権主義
バーンスタイン 俗なるものの聖化への挑戦と挫折
マリア・カラス この世を超えて異界へと誘う巫女の声
カール・リヒター 今こそ、そのバッハが見合う時代!?
カルロス・クライバー 生動する無
グレン・グールド 線の変容
吉田秀和 心に底流ぢていた声を聴く
著者等紹介
片山杜秀[カタヤマモリヒデ]
1963年、仙台に生まれ、東京で育つ。思想史家、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。同大学大学院研究科後期博士課程単位取得退学。専攻は近代政治思想史、政治文化論。吉田秀和賞、サントリー学芸賞、司馬遼太郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
16
自称「今日も喋ってしまう虎の尾を踏む男」(p298)片山杜秀がクラシック音楽の核心に迫る。 近現代の音楽(西洋のみならず、日本のも)のファンを自認する著者が本書で語るのはクラシック音楽の定番中の定番の人たち。映画もテレビ・ドラマも大好きな片山氏。近代政治思想史を講じる教授で文学にも詳しい。 『ウルトラセブン』で流れていたモーツアルト、『白い滑走路』で効果的に使われていたショパンなどの作曲家、フルトヴェングラーやカラヤンなどの指揮者、伝説の歌手マリア・カラス、 →2024/11/15
コチ吉
7
音楽評論に留まらず多方面の著作がある著者だが、どちらかと言うと敬遠していてほとんど初めて読んだに等しい。特異な切り口から縦横無尽に語り、時に生理的に、赤裸々に生涯を晒す事も厭わず、斬り込む。その中からその音楽家の本質、というか本音が見え隠れする。最後に取り上げた吉田秀和が優れた論考になっており、大いに共感した。2023/05/28
Hotspur
3
ベタなタイトルで気が引けたが、家内の薦めで読む。15講のうち、作曲家が6人、指揮者・演奏家が8人、そして批評家の吉田秀和、という内訳。聞き書きで読みやすいが、内容は予想以上に濃く、限られたスペースでそれぞれの音楽家の位置づけを分かり易く提示し、ほとんどの対象が手垢まみれであるにもかかわらず、その視点が新鮮である点には脱帽。異色の最終章である吉田秀和については、筆者が直接その謦咳に接しているせいか、進むにつれて語りの温度が徐々に上がり、そして哀しみが滲み出てくる様には軽い感動を覚える。2024/06/24
SOLVEIG
2
「音楽放浪記」二巻以来の片山先生本。作品や演奏のスタイルとその音楽家の境遇との関係についての考察になるほどなと思うところ多々ありでかなり面白く、今後の聞き方が少し変わるかも? 表題になってる音楽家だけでなく、よく並べられる人達にも言及していて、痒いところに手が届いた感じも嬉しかった。正直あまり興味持ってなかった吉田秀和の著書も読んでみたいなと思ったりも。しかし、一番の収獲(?)はず~っとタイトルが出てこず悶々としてたショパンのバラード1番が印象的だったTVドラマが『白い滑走路』だったとわかった事かも!? 2023/11/28