出版社内容情報
鶴見俊輔の原点にして主著ともいえる前期-中期の名アンソロジー、初めての文庫化。鶴見自身が自身の全作品のなかで最も気に入っていたという論考「かるた」を収録。解説:黒川創
著者情報
1922年生まれ。哲学者。 雑誌「思想の科学」発行の中核を担い、ベ平連など社会運動にも携わる。評論も多く、その対象は社会問題から小説、大衆芸術までと幅広い。『鶴見俊輔集』『鶴見俊輔書評集成』など。
内容説明
「子供の頃の疑問の幾つが、今残っているか」(「かるた」より)。幼少期の記憶、米国留学で接したプラグマティズムの伝統、戦地で経験する「思想」の試練…。「言語」「コミュニケーション」との格闘に始まる前半期の主著、初めての文庫化。
目次
1(言語の本質;現代アメリカのコミュニケイションの諸相;日本語と国際語 ほか)
2(国民文化論;岩手の保健;ヴァイキングの歴史 ほか)
3 私の本(かるた;苔のある日記;戦争のくれた字引き ほか)
著者等紹介
鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年生まれ。哲学者。雑誌「思想の科学」発行の中核を担い、ベ平連など社会運動にも携わる。評論も多く、その対象は社会問題から小説、大衆芸術までと幅広い。2015年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
amanon
9
これが五十年以上前に出たものだという事実に、複雑な感慨を覚える。一見、前時代的で、今では悪き意味でのリベラル左派のレッテルを貼り付けられかねない言述も散見されるが、同時にこれが半世紀以上も前に書かれたものかと驚きを禁じ得ない鋭い知見も少なからず見受けられるのだから侮れない。個人的には哲学の専門用語について画期的とも言える提言をした「哲学の言葉」がとりわけ興味深かったか。哲学の専門用語を巡る状況が、この当時から一歩も進歩していないという事実に嘆息。また、「ヴァイキングの歴史」は続編を書いて欲しかったか。2023/03/18
peco
1
鶴見俊輔が20代から40代という働き盛りに書いた論考集。多くの新しい気づきを得た。新渡戸的折衷主義。賞味期限はとうに過ぎているのに日本の政治、官僚体制は未だ新たなフレームワークを見出すことができておらず政策の混乱ぶりの一端を見る。三部においては逃れたくても逃れることのできなかった知識人の消極的待避。苦渋の思いが滲んでいる。時代や軍部よりも己れ自身に対して。その正直さが戦後の行動に繋がっていくのだろう。そして我々も「自己を含まない集合」として論を張ることがいかに無責任なことか自覚し続けねばならない。2023/10/20