出版社内容情報
ある朝突如有名人になったK。夢のように一変した日々は、不気味な迷宮への入口だった……“とんでもない小説”行定勲(解説)
内容説明
ある朝目覚めるとKは有名人になっていた。世界は夢のように一変したが、めくるめく日々は、不気味な迷宮への入口だった…成功者の恍惚と不安を“ありのまま”作品化して“とんでもない小説”(行定勲・解説)と評された史上稀に見る怪作。この作家危険取扱注意。
著者等紹介
羽田圭介[ハダケイスケ]
1985年東京生まれ。高校在学中の2003年、『黒冷水』で文藝賞を受賞してデビュー。2015年『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
39
芥川賞受賞で有名となり、多忙な中テレビ出演も積極的にこなし成功者と呼ばれるようになった小説家K。この人物は言うまでもなく著者ご本人をモデルとし、受賞後の日々を描いた内容は実際体験した本人たればこそ。売れない作家がある日を境に有名作家になり、あからさまに俗人と成り下がる様はよく書けるなと思う。頻繁に使用される成功者という言葉や傲慢な態度、果ては美女との性交が何度も描かれるといった過剰に露悪的な内容が狙いだとしても辟易するが、あくまで私小説ゆえ次第に虚構が現実を侵食してくるような不気味さが吸引力となっている。2022/05/07
桜もち 太郎
23
私小説のようで私小説でない。芥川賞を受賞したkがテレビ等でもてはやされ、大金を手にし、そしてモテまくる。美人のファンに手を出しまくり、女優の卵と付き合うk。まさしく「成功者k」の誕生だ。しかし成功と思われていた毎日が、迷宮への入り口になっていた。小説家としての成功者になれていないと感じるようになり、迷宮に入っていく。物語の中で「成功者k」を執筆していく。最後は精神崩壊になってしまったのか。今一つよくわからない終わり方だった。小説家って承認欲求が強い職業なんだろうな。2023/02/05
本屋が山田
11
これがもし実話だとしたら、それなりに問題作。自らのプライバシーをさらけ出した私小説とも 見られる。芥川賞を受賞し成功したその裏で、Kは“性交者”になっていた。よく聞く話ではあるが、カネが人を変える。幸せの定義は人それぞれであるが、果たして大金を手にしたら幸せ?モテたら幸せなのか?幸せとはなんだろうか、について考えさせられる一冊。スクラップアンドビルドとは違い、中身は相当下衆な本ですが、それでも読めてしまうのは、芥川賞作家ならでは、といった感じです。売れるためには手段を選ばない。2022/04/12
えーさく
10
ご本人をモデルにしているかのような設定に興味を持って読みました。ギャラの交渉や有名人になっていく過程(周りの人に対して、ちょとずつ横柄になっていく所とか)の生々しさが面白かったですが、僕にはちょっと長すぎたかもしれません。2024/02/10
ねんまに
7
作者自身をモデルにした主人公は、芥川賞を取ってメディアからもてはやされるようになった自分のことを成功者と称し、大衆が考える嫌な成り上がり人の行動をこれでもかと取りまくります。この手の作品は最終的には、主人公が凋落するか、妄想だったことにするかなどして畳むしかありません。でないと、ただ単に嫌なヤツの話になり、誰も得しないからです。しかしこの作品はそういう分かりやすいオチを持たず、結局なんだったのか、という形で幕を閉じます。それこそが最大の怪奇であり、ただの大衆娯楽にしないという純文学作家の覚悟を感じました2024/05/16