出版社内容情報
ホテルの一室で一人の若い男が死んでいた。所持していた旅行鞄の中には十二神将像の一体が……。名作ミステリ待望の復刊!
内容説明
魔方陣を象った九星花苑で罌粟を栽培し、宴を催す秘密結社。その一員が急死した。傍らには十二神将像の一体が。茶道の貴船家、薬種問屋の最上家、花舗・菓子司の真菅家、精神病理学者飾磨天道、サンスクリット学者淡輪空晶、青蓮寺住持。絡み合う忍恋の行方は、そして十二神将像と花苑の秘密とは―。現代短歌の巨星が遺した絢爛豪華な傑作ミステリ。
著者等紹介
塚本邦雄[ツカモトクニオ]
1920年、滋賀県生まれ。歌人、評論家、小説家。歌誌「玲瓏」主宰。51年第1歌集『水葬物語』でデビュー。三島由紀夫の支持を受ける。以後、岡井隆、寺山修司らと前衛短歌運動を展開し、成功させた。『日本人靈歌』で現代歌人協会賞、『詩歌變』で詩歌文学館賞、『不變律』で迢空賞、『黄金律』で斎藤茂吉短歌文学賞、『魔王』で現代短歌大賞を受賞。2005年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
71
魔方陣を象った九星花苑、罌粟、茶道家元、秘密結社、十二神将像。これらのギミックは言葉を連ねているだけで魅力的なのだが、本書の特異な所はこれがトリックとして使われるのではなく、全てが美のために使われるところ。読みながら何となく『虚無への供物』を思い出してしまう。思えばあちらも地上の事件を描きながらも、本当に描いているのはどこか彼方を思わせるような作品だったなあ。イデアみたいなもので、大半の小説も影を描いたものにすぎないが稀にその光源を覗き込むような小説を読む事が出来る。本書もそんな一冊ではないかと思った。2022/02/05
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
58
帯で岸本佐知子さんが褒めているので読んでみた。岸本さんの本を1冊も読んだ事が無いのに!。1ページ目で一目瞭然なのだが、旧仮名遣いで書かれた小説である。読み始めると、つまらない訳ではないのに疲れて眠くなる事がしばしばなので、毎日1章ずつ読む事にした。旧仮名遣いでペダンチックで麻薬で茶道で仏教で秘密結社でミステリという、ある種の人が好みそうな耽美的な雰囲気を撒き散らしている書物であった。そういうものが苦手で、ついついこけおどしに思ってしまう私にはイマイチなのだが、確かに無二の小説ではあると思いました。はい。2022/01/15
Shun
34
歌人の手によるミステリ小説。初読となる著者の情報は故須永朝彦が師事していた歌人として知り得ることができ、また歌人としては古の柿本人麻呂や藤原定家と並ぶ人物との評価だそうです。本作は歌人・塚本邦雄の知識と技術が際立つミステリ小説として稀有な1作。そんな巨匠の作を前に読了は大変な作業となった。読み慣れないかな読みや仏教用語の多用、そして雅な花苑に咲き並ぶ多種類の花々、古式ゆかしい礼儀作法といった様々な素養が試されます。十二神将の存在はミステリ小説的には見立ての役割か、これに暦やら方位が加わり難解な内容でした。2022/05/15
yamahiko
18
美しい日本語による耽美小説として楽しみました。久しぶりに真剣にメモをとりながら読了。2022/09/20
ぐっちー
14
歌人として有名な著者の小説、初めて読みました。全ての言葉が計算し尽くされて配置されていて、読んでいて快感ですらあった。いくつもの秘密にドキッとしたり、女たちの言葉での殺陣、茶室での攻防戦、絢爛たる現世と鏡合わせの魔境に酔いしれました。2023/01/20