出版社内容情報
電車火災事故と人気作家の妹の焼身自殺。二つの事件を繋ぐ驚愕の秘密とは――。人間の魂の闇が引き起こした地獄を描く傑作短篇集。
内容説明
夜は魂ほどに暗くない―電車火災事故と人気作家の妹の焼身自殺、二つの事件を繋ぐ驚愕の真実「赤い〓人形」、墜落が迫った機内で乗客たちが繰り広げる狂乱「30人の3時間」、天使のような娘が秘めた罪と愛「新かぐや姫」。凄絶に哀切に、そして容赦なく、鬼才が人間の闇を描き出した傑作八篇を収録。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大学卒。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第2回探偵作家クラブ賞を受賞。63年から刊行された「山田風太郎忍法全集」がベストセラーとなり忍法帖ブームをまきおこした。その後も明治もの、室町もの等多彩な作品で人気を博す。2001年7月28日逝去。10年にはその名を冠した山田風太郎賞が創設された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょこりり@みつしり
71
いわゆる探偵小説。ここが地獄か。藁にもすがる。蜘蛛の糸は千切れた。山田風太郎が千切った。途切れないのは、探偵小説から流された血。受け継がれてきた契り。阿鼻叫喚。悪逆非道。悪鬼羅刹。極悪だ。血を掬って、血で血を洗う地獄絵図。救いはない。なんて恐ろしい事を!なんて恐ろしい。探偵小説が描いてしまった業が令和に甦える。なんて罪深い読み物なんだ。黄泉の国から高嗤い。探偵小説だけに許された愚行。探偵小説だから描けた。推理小説でも、ミステリでも、新本格でもない。これが探偵小説。社会派なんてクソ食らえ。これが探偵小説だ。2022/01/17
やま
13
8編の短編集。人の情に対する怖さを感じる内容。昭和20年〜30年代の戦後の空気感を味わいながら楽しむことが出来ました。現在では、聞き慣れない言葉を調べながらだったので読むのに時間がかかりましたが面白かったです。2022/05/13
コチ吉
12
山田風太郎も敬遠していた作家で、初読みである。これは傑作。ミステリを数多く読んでいると、それなりに先が読めてしまうものだが、物語の持つ熱量に圧倒されるのだ。全編に漂うむせ返るようなエロスも横溝色とは異なり、かえって現代には新鮮。表題作もいいが、「新かぐや姫」「二人」に惹かれた。2022/03/25
Inzaghico
12
どの話も人間の業の深さをこれでもかと見せつけられ、哀しいを通り越して背筋が寒くなる。自分もどこかにこのような業を抱えているかと思うと、悲しくなるし、怖くなる。でも、他人だとそこが面白いんだけど。 どの作品も女性がカギ、キモとなる。男性によって運命を狂わされる女性、男性を手玉に取ってその運命を狂わす女性と両方いるが、どの女性の翳の部分も同情するに余りある。どの話も、一度レールを踏み外したら、もう二度とレールに戻れないということを繰り返し違う展開で訴えているのが、なんともはや。2022/01/20
くろばーちゃん
5
日下さん編による山風アンソロジー2冊目。次男から借りた本。初めて読んだ『黒衣の聖母』は全編戦争がテーマで苦しいながらも気に入ったのでこちらも読んだ。読んでみて、帯に書いてある言葉に深く共感する。「地獄だ。それでも読むのを辞められない」とりわけ「誰も私を愛さない」は地獄で途中で読むのをやめようと何度も思った。途中で辞めていたら、本当に地獄だったかも知れない。「わが愛しの妻よ」は最近書かれたのか、と思うような内容だった。まだ、山風の時代小説を読んでいないので読んでみたい。2022/04/21