出版社内容情報
一大決戦へと書き進める馬琴を家族の死と失明が襲う――古今無比の風太郎流『南総里見八犬伝』、感動のクライマックスへ!
内容説明
「正義が悪に勝つ過程をえがいてこそ小説の存在意義があるのだ」。息子・宗伯を失いながらも、八犬士と管領扇谷定正軍の決戦へと書き進める馬琴を失明が襲う。執筆開始から二十八年、八犬伝は未完に終わるのか。絶望から馬琴を救ったのは―。風太郎流『南総里見八犬伝』、虚と実は冥合し、感動のクライマックスへ!
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大学卒。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第2回探偵作家クラブ賞を受賞。63年から刊行された「山田風太郎忍法全集」がベストセラーとなり忍法帖ブームをまきおこした。その後も明治もの、室町もの等多彩な作品で人気を博す。2001年7月28日逝去。10年にはその名を冠した山田風太郎賞が創設された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
128
味わえた一冊。上下巻通して江戸時代の代表作を味わえ、どのような創作の時間があったのかを味わえ、まさに一粒で二度美味しい作品だったと思う。八人の犬士の集い、あの時のあれが…と、現代の伏線回収のような感覚で楽しかった。幼い犬士、親兵衛の物言いは可愛らしくもあり、和んだな。そして晩年の馬琴という人物を深く知れたのも楽しかった。偏屈だけれどどこか憎めない。むしろ哀しみにまみれた人生を歩んでいた彼の気持ちが憐れみを誘う。虚という世界に自分の想いの筆をぶつけ、自分という小世界から壮大な世界を描きだしたことにただ感服。2023/09/04
納間田 圭
104
現実の世界と…虚構の世界。作者”馬滝沢琴”と…盟友”葛飾北斎”とのボケとツッコミ。馬琴の息子夫婦の健気な話しは…涙物。仁義礼智忠信考悌…の八つの不思議な玉。その玉を持つ8人の犬士たち。下巻は…最後8人目の少年犬士”犬江親兵衛”の登場が読み処。それから…毒婦”船虫”、怨霊”玉梓”の不気味さも〇〇。ワクワクするような…勧善懲悪と因果応報。登場人物一人ひとりへの…完璧なまでの拘りと思い入れ。これが江戸時代に書かれた物語ってことが… 信じられない。更に最後の方は失明のハンデの中で仕上げられたってことに…びっくり2025/01/23
さつき
77
下巻は八犬士たちの活躍する虚の世界よりも馬琴の人生がメイン。最後の方は口述筆記で書いたという事は聞いたことがあったけど、こんなにも苦境にあったとは知りませんでした。そして八犬伝の世界で因果応報が貫き通された理由が作者の性格や生き方を垣間見ることでよく理解できた気がします。2023/07/25
ポチ
46
なるほど、八犬士はこうやって現れたのか。馬琴の私生活や性格はこんなだったのか。八犬伝の事だけでなく、馬琴の事も併せて綴ってあり面白く読了。2023/08/11
geshi
32
「八犬伝」の面白い所は犬士が集まるまでと見切って豪胆にも戦争シーンはダイジェストで流す剛腕の筆力。話にかけるウエイトがだんだんと「虚」から「実」へと移り変わり、ラストの「虚実冥合」で虚実が一体となるとんでもない所へ持っていかれる。息子の死により継がれる名を失い、失明により物語を書く手立てすら失い、それでも「八犬伝」を完成させようとする作者の業。しかし物語こそが作者自身を生かしてもいるという肯定によって昇華させる結末は、馬琴に山風自身が二重写しに見えてくる。2021/06/17