出版社内容情報
名著復刊!戦後黒人兵と結婚しNYに渡った笑子。偏見と人種差別の中で逞しく生き方を模索する。アメリカの人種問題を描く感動傑作!
内容説明
色に非ず―。終戦直後黒人兵と結婚し、幼い子を連れニューヨークに渡った笑子だが、待っていたのは貧民街ハアレムでの半地下生活だった。人種差別と偏見にあいながらも、「差別とは何か?」を問い続け、逞しく生き方を模索する。一九六四年、著者がニューヨーク留学後にアメリカの人種問題を内面から描いた渾身の傑作長編。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年和歌山県生まれ。幼少期をインドネシアで過ごす。東京女子大学短期大学部英語科卒。56年「地唄」で芥川賞候補となり、文壇デビュー。一外科医をめぐる嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、歴史や芸能を扱った『和宮様御留』(毎日芸術賞)など、さまざまな分野の話題作を発表し続けた。84年急性心不全のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
130
差別とは何かを掘り起こした一冊。ものすごく惹きこまれながらも絶えず鉛のようなものが心に沈殿していく時間だった。戦争花嫁として、アメリカの黒人兵と結婚した主人公の笑子。その笑子の目線から、差別なる土壌にスコップを立て少しずつ土を掘り起こし、差別の根なるものを探していくよう。人種のるつぼアメリカで目の当たりにした肌の色だけで括れない現実。弱さも強さもズルさも…笑子の感情のるつぼに共に揺さぶられ続けた。そして笑子が辿り着いた差別の根という答えにスッと背中に冷たい風が吹いた。心から思う。この本を手にして良かった。2024/01/25
まさきち
119
戦後、占領軍の一員として日本に来た黒人男性と結婚し、後に渡米をしてたくましく生きていった女性の半世紀。その中で遭遇する人種、階層の差別に戸惑う姿に圧倒されましたが、自分が子供の頃にもこういった差別的な扱いは色濃くあったなと改めて思い起こされ、色々と考えさせられた一冊でした。有吉さんのさらさらと流れるようで大事なことはしっかりと伝える文面も素敵でしたし、手にして本当にいい一冊でした。2022/12/10
ふう
96
フィクションで、しかも戦後の米兵と日本人女性の結婚から始まる物語なのに、目の前で今起きている現実を見せつけられているような重く力のある作品でした。『非色』色に非ず。皮膚の色が差別の要因の中で一番大きな比重を占めていますが、人は同じ色の中でも差別の種を見つけます。人種、出身国、教養、職業。性別も大きな要因ですが、この作品では、むしろ女性の方がたくましく賢明に描かれています。主人公笑子が差別から逃げず、差別される側で生きていくと決めた強さに、「差別をしない生き方」というのはこういうことなんだと胸を突かれました2023/09/06
TAKA
79
「この世の中には使う人間と使われる人間という二つの人種しかいないのではないか。皮膚の色の差別よりも大きく強く絶望的なものではないだろうか」肌が黒いとか白いとかなんてのは偶然のことであり黒人がこき使われる側に属していただけという。自分と異なる者がいれば人間は差別してしまうこれは人類滅亡するまで無くならないと思っている。流行りの多様性だとか綺麗事でしかない。人はそういう生き物です。それを乗り越える力を個人で持つことが手っ取り早いのではないかと。笑子のように朱に交われと。2023/11/09
佐々陽太朗(K.Tsubota)
79
差別は何も肌の色によるものだけではない。私にも後ろめたいところはいくつもある。それは少なからず私の矜持にかかわる部分でもある。誇りを持つことは悪いことではないだろうが悪くするとそれは差別意識につながる。だからといって、それを非難されても困る。「非色」、色に非ず。人は肌の色で中身が決まるものではない。差別されたり、差別したり。程度の差こそあれ誰の心にも人に優越したい気はあるものだろう。自分をしっかり持て。決してくじけるな。誇りを持って胸をはれ。差別を笑い飛ばして強く生きろ。つまるところそういうことか。2022/04/28