出版社内容情報
私たちは、いま本当に自由なのか? 新自由主義の生成過程とその核心部を鮮やかに描いた名著を、文庫化にあたり大増補した決定版。
内容説明
わたしたちは本当に自由なのか?―一九八〇年代から現在まで、全世界の政治・経済・社会を貫く「ネオリベラリズム」の生成過程を、規律社会から管理社会へと移行する権力の編成としてダイナミックに描き出しながら、フーコー以降の政治社会論を根底から更新した名著、待望の文庫化。二〇〇〇年以降の危機的状況を、権威主義的リベラリズムとして読み解く斬新な考察を大幅に増補した決定版。
目次
新しい権力地図が生まれるとき―“運動”以降
1 フーコーと自由の現在(リベラリズムの差異と反復―統治論;生に折り畳まれる死―権力論;敵対の転位―法/ノルム論)
2 セキュリティと自由(“セキュリティ”の上昇―現代都市隔離論;恐怖と秘密の政治学;現在性の系譜学へむけて―「犬」と例外状態;『自由論』韓国語版の序文)
著者等紹介
酒井隆史[サカイタカシ]
1965年生まれ。社会思想。『通天閣 新・日本資本主義発達史』でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
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またの名
12
倒錯的フィストファックが一見無関係な手作りパン即売会や町内祭りの基盤になってるのではと思考した変態思想家フーコーに依拠するので、当然議論は逮捕監視される側目線。罪が犯される前に逮捕理由を確定し「事件は会議室で作られる」のが可能になったネオリベのセキュリティ時代を早くから取り上げた本書は、オウム真理教も若者のアイデンティティの物語とする趨勢に抗して、後期フーコーが退けた排除概念をフーコーにつなげ直す。対権力の闘争現場では虚偽や捏造を平然と流されるのでポストトゥルースなんて今更という、経験から来る達観が超然。2021/04/09
絵比 乃魅須
2
18年前の著作とは思えない。まさに今のことが語られている。それがこのネオリベ体制からの脱却の困難さを示しているのだが…文庫化で加わった文章も興味深い。2019/11/02
zk
1
日本における研究ではフーコーとネオリベラリズム批判の文脈がまだほとんど立ち上がっていない中で「ネオリベラリズムの浸透にともなう権力行使における暴力の契機の上昇、「抑圧的側面」の再浮上、一言でいえば、「例外状態の常態化」というべき状態を浮き彫りにして、それをふたたびフーコーの議論に折り返し」た功績はあまりに大きいと思います。2022/03/30
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1
ネオリベ分析・批判の嚆矢であり、セキュリティの上昇、抑圧から排除へ、世界の捏造化、といった問題設定は今でも全く古びないどころか、当時(2000年頃)よりも今の方がよりダイレクトにリアルに感じられる。いかに統治されないか、という文脈における「批判とは自発的不服従の術であり、反省された不従順であるのです。」というフーコーの言葉が益々重要性を帯びてきている気が。2020/07/23