出版社内容情報
異様な復員兵の帰還、直後の殺人事件、5年前の轢死事件、さらなる殺人事件、その関連、犯人は? 巨勢博士活躍推理長篇!
内容説明
昭和22年9月、小田原の成金倉田家に、白衣姿の異形の傷痍軍人が現れた。片手片脚、両眼がつぶれ口もきけないその男は、外地から復員した倉田家の次男安彦と思われたが、その翌晩、倉田家を惨劇が襲う。そして、五年前の倉田家長男親子の轢死事件が浮上する―。安吾の途絶作を、名匠高木彬光が巨勢博士の活躍で見事に完成させた傑作。
著者等紹介
坂口安吾[サカグチアンゴ]
作家。1906年、新潟市生まれ。東洋大学印度哲学科卒。「風博士」「黒谷村」でデビュー。戦後、「堕落論」「白痴」などを発表、無頼派・新生日本の旗手として活躍。代表作に、「桜の森の満開の下」「不連続殺人事件」(第2回探偵作家クラブ賞)、「信長」「安吾巷談」など多数。1955年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
61
戦前ある一家を襲った謎めいた事件。鍵を握る人物が出征した事で迷宮入りになったが、復員した事によって新たな事件が巻き起こり…。坂口安吾の死によって中絶した作品を、高木彬光が書き継いで完成させた一冊。個人的に探偵小説の合作は無理がある作品が多いように思うのだが、本書もその例に漏れず。高木彬光が頑張っているのはわかるのだが、細かい部分やちょっとした統合性に無理が出ているのである。謎めいた一文の意味等、解明された瞬間コケそうになったし。ただ安吾の遺した言葉でも無理がありそうだし。そういう作品として読むべきかな。2025/03/07
sashi_mono
20
諸事情で未完成のままになっていた安吾の探偵小説を、高木彬光が書き継いで完成させた「巨勢博士シリーズ」の第二弾。前半に比べると後半の尻すぼみ感は否めないが、小説の構想を高木氏が端から練ったわけではないので致し方ないところ。気になったのは作中で重要な役割を果たす「手形」の存在。そもそも登場人物が手形を準備する動機の必然性がとぼしいように感じられたのたが・・・。2020/04/07
Wan-Nyans
19
★★★☆無頼派作家・坂口安吾の未完成原稿に、推理界の巨匠である高木彬光氏が書き足して完成させた長編推理。時代は終戦間もない昭和22年だが、元原稿も古臭くないし、カタカナを多用して読みやすい。書き足された「続編」も文体をマネテ書いた高木氏の苦労が読み取れるし、安吾の意図をアルイミ無視して創作された部分も自分としては楽しめた。ただ、偉大な坂口安吾の完コピはゼッタイにムリだし、読んでいて違和感が無いとは言えないが、セイイッパイの努力は認めたい。安吾の頭にあった本当のケツマツを知ることは叶わないのだから(^^)2019/09/15
乃木ひかり
18
坂口安吾と第二回探偵作家クラブ賞を争い、そしてその刺青殺人事件を安吾にボロクソに否定された高木彬光が本書の続編を書くとはなんの因果か。安吾が書いていたらどんな結末になったのか非常に気になる。ページ数も倍ぐらいになりそう。目が見えない人間がどうやって字を書いて筆談したのか気になる。2019/09/13
kinshirinshi
15
坂口安吾の未完の推理小説を高木彬光が完成させたもの。探偵は巨勢博士、語り手は作家の矢代という、『不連続殺人事件』のコンビが再登場する。高木編では、大矢警部の性格や口調が変わっていたり、安吾のカタカナの真似がくどいなど、気になるところはたくさんあるけれど、とりあえず完成させてくれてありがとうと言いたい。でもやはり、安吾自身による結末も読みたかったな。2021/07/28